不思議な体験かー。
おっさん話に需要があるかわからないけど、自分に起こった話をしてみるわ。
中学生ぐらいの頃になるかな。
うちは二階立ての一軒家で、俺と弟は同じ部屋を使っていた。
弟は、一階でゲームをしていたのか、テレビを見ていたかで、部屋には俺一人だけだった。
勉強の息抜きにFMラジオをつけて、雑誌を読んでいた。
30分ぐらいしてからかな、勉強の続きでもするかなと思ったら、急にラジオの電波が悪くなった。
雑音が混じり始めて、ガリガリ、ガリガリって音しか聞こえなくなってしまった。
それまで電波が悪くなることなんてなかったから、ラジオが壊れたのかなと思って電源を切ってみた。
そうしたら、ラジオの音が消えないんだよ。
ガリガリ、ガリガリ……。
電源を落としてるはずなのに、異音は鳴り続ける。
あんまり幽霊とか信じてないかわいくないガキだったけど、こいつはヤバいと思って親父とお袋を呼びに行こうと椅子から立ち上がろうとした。
その瞬間、周りが一気に眩しくなった。
雨戸の隙間から光が入りこんできて、俺が光に包まれた。
車の光や溶接の光、稲光とかいろんな光を見てきたけど、うん十年経っても、あの光よりも眩しいものを見たことがない。
未だになんて表現したらいいのかわからないし、なんだったのかわからない。
光に包まれた直後、意識がトんだ。
次に気がついたのは、弟に肩を揺らされた時だった。
ラジオをつけっぱなしで、雑誌を床に落としたまま呆けていたらしい。
俺は弟に変なものを見なかったか尋ねた。
弟は、何もおかしいものはなかったと返してきた。
あれだけ眩しかったら、下の部屋でもわかるだろ、と思ったけど本当に何もなかったと言った。
具合がおかしくなったのか、勉強に根を詰めすぎて目が疲れているんじゃないかと言われて、その日は早めに布団に入った。
ただ、光を見た翌日からか、誰かに見られているような気がするようになった。
布団に入って目を瞑っていると、顔を覗き込まれているような感じがするし、下校時も何かに見られている気がした。
親に相談をしたけど、うちは両親ともに幽霊とか超常現象を信じていない。
気のせいだと言われ続ければ、自分もそんなものかと思うようになった。
そう思っているうちに視線は感じなくなっていった。
でも、特殊なことは残った。
これは親にも言っていないし、家族も知らない。
一つは、人の視線というか、こちらを見ているという気配に敏感になったことだ。
電車に乗っていて、隣の車両からこっちを見ているのに気がついたり、走っている車から、友人が俺を見ていることに気がついたりする様になった。
もう一つは嗅覚に関してだ。
その場所で嗅ぐはずのない匂いを感じるようになった。
飲食は禁止されていて、持ち込むこともできない場所で、食い物の匂いを感じたりするんだ。
それが晩飯に上がってたりすることはあるし、時にはなんだか生臭い臭いを感じることもある。
何もない無機質なところで、だ。
そういう時はかなりの確率で、電車で人身があったり、帰り道の道路で事故が起きてたりする。
いったい、なんだかわからない。
気のせいだ、ていうには、余りにも強烈なんだ。
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