結構昔の話になるがマイナーな山に一人休日を利用して登山に向かった
夜明け前から登り始め山頂で日の出を見ようとしていた
登山と言っても山頂でも電波があり往復5時間前後で終わる日帰り登山くらいの軽いものであったが、その日は生憎天候に恵まれず霧の深い日だった
ヘッドライトで照らしながらでも視界が悪く、ペースが思ったよりも上がらなかった為に山道の途中で夜明けを迎えてしまった
もうライトは要らないなと思いふっとライトを消してしばらく歩いていると自分の30mくらい先に黒い人影が見える
ああ、これがブロッケン現象って奴か
自分の影が霧の中に投影され、さも霧の中に誰かが居るように見える現象
霧が出ていたのと丁度太陽を背に歩いていたので直ぐにピンと来た
山頂で日の出は見れなかったが珍しいモン見れたなあと一人小さな感動を覚えながら登って行く
山道がカーブしているところに来た時、ふっと違和感を覚える
今、俺は北側を向いているのに影が消えていない
もしかして本当に誰か居るのか?でも30mくらいの距離なのに足音のようなものも聞こえない
それに夜明け前に登っている時も周囲に他の光源はなかった
地面には他の登山者の足跡が複数あるからこの中に前を歩く誰かの足跡もあるだろうか
アレは本当に人で俺と同じように日の出を見ようとしてた人なのかなと思い深く考えず歩き続けた
それから5分もしない内に影は見えなくなり、30分もしない内に山頂へ辿り着いた
しかし、山頂では誰とも合わずそこまでの山道でも誰ともすれ違うことはなかった
アレは一体何だったのだろう
ブロッケン現象でできる影には後光が差すということを最近知ったが、記憶にある影には特に後光も何もなかったように思う
本当に霧の中にポツンと人影の影があっただけ
特に遭難者が出たという話も聞かないしその山には怪談も何もない
アレは一体何だったのだろうか
人知れず山頂付近でコースを外れた登山ガチ勢や早朝の山菜採りのような現地人だったのか、はたまた遭難して誰にも発見されていない人なのか、幽霊妖怪の類いなのか
真相は分からないが思い返すと不気味な話
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