私の上司・Sさんの元同僚は、少し気味が悪い男だったそうです。
Sさんは有名なアパレルショップで勤めていたそうなのですが、このショップ、兎に角多忙な店舗で、Sさんも例に漏れず仕事に追われる日々を過ごしていました。
しかし、問題の同僚・Aだけは違いました。
全員に課されている筈の山のような仕事をほんの数時間で早々に片付け、余った時間は店舗の中をフラフラしたり、休憩室で持ち込んだお菓子を食べていたそうです。
その上、業務に追われる他のスタッフを手伝うことなどもせず、性格の悪そうな流し目でニヤニヤと嘲笑ってきます。
そんなAのことを、Sさん含め多くのスタッフは『仕事はできるけど嫌なやつ』と思っていたそうです。
ある日Sさんは、Aに書類を渡すためAが普段作業しているバックルームへ入ったそうです。
しかし、中には誰もおらず、仕事も手付かずです。
まだ開店から2時間程しか経っておらず、サボりに行くには早すぎます。
バックルームから出て、さてどうしようか、と考えあぐねているAさんの背中にバックルームの扉が当たりました。
誰もいなかった部屋から、Aが出てきたのです。
「ああ、いたのか」
Aは悪びれもせず、そう一言いって休憩室へ向かいます。
Sさんは思わず引き止めました。
「お前、今、中にいなかったろ?どこにいた?仕事はどうした?」
「いたよ。仕事も、終わったよ」
例のニヤニヤ顔を見せながらAはそう言い、再び休憩室へと歩いて行きました。
Sさんがバックルームを再び確認すると、数秒前まで溜まっていた筈の仕事は綺麗に片付いていたそうです。
魔法のようだった、とSさんは言っていました。
信じてもらえないだろうな、と思いつつSさんはこのことを仲の良かった上司にそれとなく聞いてみました。
すると、
「俺もさ、あいつが仕事してるとこ見たことないんだよな。でも、ちゃんと終わらせてるから店としてはいいんだよ」
過程より結果が大事、なんてよく言いますが、こんな超常的な過程を野放しにするお店に対しSさんは、A以上の気味悪さを感じたそうです。
きっと、小人さんが手伝ってるんだよ・・・
なるほど