俺には霊感なんて無い
そんな俺が体験した話
今から20年近く前、横浜の大手チェーンのファミレスで夜勤の調理バイトしてた。
もう店は無くなってるが。
場所が場所だから売れないバンドマンとかフリーターが多かったんだが、その中でアイドル志望の女の子Aがいたんだ。
Aはアイドル志望だけど正直美人ではなく、お笑い担当みたいな感じで明るい子で、霊感が強く大抵の霊は見えるらしい。
Aの母親はもっと強くハッキリ見えるみたいで、Aが言うには霊感が強い人の近くにいると強くなっていくらしく、小さい頃は見えなかったが母の影響で強くなったらしい。
そんなAがいるバイト先なんだが、霊の通り道らしい。
社員がPCのある1人しか入れないような狭い部屋で入力作業してると、外からバァン!と叩かれたと飛び出してきたんだが、調理場
から見てる俺は誰も見てないし音もしなかった。
ただその部屋の扉に付いてる小窓にデカい手形が残ってた。
Aが言うには、よく通る大男が気づいて欲しくてイタズラするらしい。
他にも調理場を走り回る子供や、耳元で囁いてくる女がよく通るんだって。
正直俺は面白半分でよく話を聞いていた。
そんな感じで働いてたんだが、ある日新しいバイトBが入ってきたんだ。
Bは大学生の男でA並に霊感が強かった。
俺はよくA Bとシフトが被ってたから、休憩中にAの幽霊話は本当なのか聞いてみたんだ。
すると当たり前のように同じ事言うんだよ。
俺が聞いた事ない幽霊情報まで、AとBで全く同じ事言って盛り上がってるんだ。
どっかで信じてなかった俺だったんだが、信じざるを得ない感じになって気味が悪くなってきたんだ。
休憩も終わって、夜中の3時にボーッと仕込み用の野菜切ってたら、視界の片隅に見えたんだよ。
調理場で走ってる子供が。
夜中の3時に。
ビックリしてAに話したら、
「あ、やっと見えるようになった?」
って言うんだよ。
Bが
「あの扉の近くにいる大男も見えるんじゃない?」
とか言うんだよ。
見たくなかった。
見ようともしなかった。
大男とか子供の幽霊なんて見たくないし、耳元で囁かれるなんて絶対にごめんだ。
俺はその後なるべくAとBを避け、バイトも辞めた。
視界の片隅になんか動いても何も無かったことにしてる。
怖い話は好きだが、霊感が強い人には絶対近づかないようにしてる。
俺には霊感なんて絶対無い。
霊感無いままの人生を送りたい。
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