何年か前の夕方、地方の特急列車に乗った
始発駅だったので早めに席について発車時刻を待っていた
発車5分前くらいの頃、隣の席に70代後半くらいのおばあちゃんが乗ってきた
その瞬間おばあちゃんがいきなり「あー!」と叫んだ
びっくりしておばあちゃんを見ると、おばあちゃんが俺に
「ビール!ビール買うの忘れたのよ!あなた買ってきてくれない?はい、お金!2本ね!」
乗っている列車は地方と地方を結ぶローカル特急なので車内販売がない
あまりにもおばあちゃんの顔が必タヒなのでつい引き受けてしまった
だがもう発車まで3分もない
売店までダッシュして缶ビール2本買ってきておばあちゃんに渡した
「ありがとう。わたしの足じゃ間に合わないと思って…いきなりごめんなさいねえ」
「2本のうち1本はあなたにと思って買ってきてもらったのよ。迷惑じゃなかったら一杯つきあってくれるかい?」
そういいながら缶ビールの1本を俺に渡してきた
なんだかこれも断れなくて一緒に缶ビールを開けた
おばあちゃんは孫の家まで遊びに行っただの、息子がいいお嫁さんもらっただのとニコニコと上機嫌で話してた
おばあちゃんはひとしきり話し終えたら、疲れてしまったのか寝てしまった
あまりにも自由なおばあちゃんだと思ったが嫌な気分は全くしなかった
俺の目的地に着いてもまだ寝ていたが、おばあちゃんは終点で降りると言っていたから、起こさないようにそうっと降りた
今でもこの列車に乗ると思い出すおばあちゃん、あの時言えなかったけど、ビールご馳走様でした
売店までの往復の全力ダッシュのときはかなり焦ったし、その直後のビールはかなり効いたけどね
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