私が高校の時、家に帰ろうと自転車をこいでいました。
夕方で、繁華街の近くを通りかかったとき、前からフラフラと腹巻をした
おじいちゃんがブツブツ言いながら近づいてきました。
「いややなー、酔っ払ってるみたい」
と思い、大きく迂回して通り過ぎようとしたとき、背中に衝撃があって、
自転車ごと派手に転んでしまいました。
何なのか一瞬わかりませんでしたが、そのおじいちゃんが
私の背中を握りこぶしで殴りつけてきたらしいのです。
植え込みにつっこんで、おでこがかなり痛かったので、手で
なぞると血が出ています。折れた木で切ったようです。
「危ないやろ、ボケ!女が自転車なんか乗んな!!」
と唾を吐きかけられ、呆然としてしまいました。
怒りとショックで立てないでいると、立ち去りかけたそのおじいちゃんの
シャツを、男の人が掴んで持ち上げました。
坊主頭に柄シャツの、180センチ以上はありそうな上背の、首と肩が
一直線に繋がっているような体型の男性でした。
「な、なんやお前はあ!!離せコラボケがあ!!」
と怒鳴るおじいちゃんを軽々と片手で担ぎ直し、携帯を取り出して
電話をしはじめました。
「あ、警察?今○○駅の裏ですが、アタマおかしいおっさんが
女の子毆っちゃったんですわ。…はい、障碍ですね、今すぐ来て
もらえます?」
その男性は私の上に乗っている自転車をどけてくれ(おじいちゃんを担いだまんま)、
「大丈夫?ふきや」
とタオルを貸してくれました。
はっきり言って「ヤ○ザさん」のような外見は、おじいちゃんよりも
よっぽど怖かったのですが、私が混乱しながらもお礼を言うと
みるみる真っ赤になって、
「いえ、それより、血、血」
とタオルで額を
おさえるように言われました。
警察の人たちが来ると(すぐ来ました)、その男性は
「俺全部見てたから、俺が行くから。その子は早よう病院つれてったげてよ」
とおじいちゃんを引き渡しながら言ってくれました。
大げさなのですが、パトカーでは病院へ搬送できないとかで、
救急車で病院まで行き、その後家人と警察へ行った時には
その男性はもう引き取った後でした。
警察から男性の連絡先を聞き、電話が繋がったのは次の日でした。
近所に住む大学生で、格闘技の選手でした。
彼女にしてほしい、と数ヶ月後に告白したら、ちょっと口から
泡をふきながらも真っ赤になって承知してくれました。
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