母から聞いた話
その日は一日中雨が降る梅雨の時期。
父と妹が近所の駄菓子屋から帰宅する途中、知り合いの家の前を通りかかると、その家の玄関先に奥さんが前を向いて立っていたので、父は軽く会釈してその場を後にした。
帰宅した父は
「〇〇さんの奥さん、傘もささずに玄関先に立っていたよ。会釈してもボーっとしてたなぁ」
と母に話した。
母は驚き、本当に奥さんだったのか?と父に確認した。
父は
「さすがにあの距離で見間違えない」
と答える。
それでも母は否定する。
なぜならその奥さんは現在入院中なのだ。
母は妹に尋ねた。
おばさんいたの?と。
妹は
「父さんが誰もいないところで挨拶してた」
と答えた。
その後、その奥さんが亡くなられたことを知る。
家族への別れを告げに来たのかもしれない。
それから1~2年後だろうか記憶が曖昧だが、父が町内会から帰路につく途中、再びその家の近くを通りかかると、電柱のそばから若い男性に挨拶をされた。
その家の息子さんだと気づいた。
父も軽く挨拶を返し帰宅した。
帰宅した父はそのことを母に話した。
「息子さんはずっとうつむいて話さなかったけど、大人しい息子さんだな」
と何気なく話した。
翌日近所で葬式があると母が知るが、亡くなったのは昨日父が会った息子さんだった。
亡くなった日が正確には分からないが、父は昨日会ったけど亡くなった後なのかどうか気にしていた。
死因はバイク事故。
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