社会人になって初めての誕生日の前日、会社の帰りに駅の改札を出たところで祖父に会った。
祖父は隣県に住んでて、その日うちに来るなんて聞いてなかったからビックリして
「おじいちゃん、どうしたの?」
って聞いたら
「時間が無いから歩きながら話そうか」
って言われて
肩を並べて歩き始めた。
「おまえが就職した時にちゃんとお祝いしてなかったから
お誕生日のお祝いと一緒くたにしてすまんの」
と言いながらリボンがついた細長い箱を貰った。
歩きながらだったから、その場で開けずに鞄の中にいれて
「ありがとう!」
ってお礼を言ったら照れながら頭を掻いて
「じゃあ、急いで帰らんとばあさんが心配するから」
って言ってUターンして駅に向かった。
だったら駅で話せば良かったのにとか思いながら、ひとりで家に帰った。
帰宅したら母がバタバタしてて
「あんたも一緒に来なさい!」
って言われた。
おじいちゃんが危篤なんだそうだ。
うそ、さっき会ったばかりで元気だったから聞き間違いかと最初は思った。
でもそんな雰囲気じゃなくて、姉も一緒に急いで病院に行ったら息を引き取ったあとだった。
さっき会ったおじいちゃんがあまりにも元気そうだったからずっと長い事入院してたの忘れてた。
なんだか夢を見てるような時間が過ぎて、お通夜の時に親戚たちと話してる時に
おじいちゃん、タヒぬ前に会いに来てくれたんだって話をした。
その時にはもう、あのおじいちゃんが生霊か何かだったと気付いてた。
だって確かに入れたはずのプレゼントの包みがバッグから消えてたし。
その事も話した。
そしたらお葬式が終わったあと、おばあちゃんが
「これね、あんたの就職祝いにっておじいちゃんが買ってたんだけど
なかなか渡す機会がなくてねえ」
って渡されたのが、おじいちゃんから貰ったのと全く同じ形、
同じ包装紙、同じリボンの箱だった。
目玉を後から押し出しちゃうんじゃないかってぐらいぶわっと一気に涙がでた。
「自分の手であんたに渡したかったのかねぇ」
っておばあちゃんも泣いてた。
箱の中は真珠のネックレスだった。
大人になったらひとつは持ってなきゃいけないって言って、
姉も就職した年に貰ったそうだ。
隣県なんて近いのに、もっともっとおじいちゃんのお見舞いに行けば良かった。
愛してくれてたんだね
プレゼントが消えたのが不思議だ・・・周りからお祖父様は見えてたのかな?