昔どこかに書き込んだような記憶があるんだけど、この時期になると思い出すからまた投下。
幼稚園からずっと一緒だった親友と、大学進学を機に離ればなれになった。
私は地元の大学だったので、ゴールデンウィークを利用して親友のところへ遊びに行ったんだ。
親友のアパートは、一般的に想像できる学生アパートじゃなく、3DKでけっこう広く、お風呂もユニットバスじゃなくて家族向け物件みたいだった。
学校から一駅の距離で狭苦しい学生アパートと変わらない家賃と来れば、オカ板に書き込んでいる時点でお察しいただける通りのことが起こるわけだが、親友はそれを承知でそのアパートに決めた。
アパートに到着して部屋に上がると、日当たりもよく手入れも行き届いて変なところは全くない。
私自身の霊感が皆無なこともあり、寒気がするとか頭が重くなるなどということもなく、居心地のいい部屋だという印象しかなかった。
だから、事が起きるのは夜だろうと思ったんだ。
荷物を置き、トイレを借りようとして部屋を出てふと気付いた。
玄関の上がり口に、中学生の男の子が背中を向けて座っている。
ちょうど靴ひもを結ぶときに腰かけるみたいに自然で、私は親友の弟だと思い「こんにちは」と声をかけた。
それくらい自然だった。
当然、彼は振り向かず、ただ背を向けて座っている。
私は彼が何なのか気付いたが怖くなかった。
用を足し、部屋に戻るときも、彼は同じ所に座っていた。
親友にそれを告げたら、「玄関を入るときは居ないが、部屋に上がって振り返るといる」のだそうだ。
親友が借りた部屋自体は事故物件ではない。
もともとこのアパートに住んでいたのは両親と中学生の息子の3人家族で、息子さんが学校へ行く途中で交通事故で亡くなり、ほどなくご両親も引っ越されたそうだ。
『出る』とわかっていても挨拶してしまうくらい、肩をたたいたら体温を感じそうなくらい自然な姿で、「息子さんが帰って来てるよ」と教えてあげたいが、ご両親の行方は全くわからないという。
私が親友のところにご厄介になっている間、いつでも彼はいた。
親友は一度留年し、5年間あのアパートで暮らしたが無事に大学を卒業した。
たまに会ってお酒を飲むと、「あの子どうしてるだろうね」という話題になる。
ちなみにそのアパートは素敵なマンションに建て替えられ、格安の部屋はもうない。
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