私はT県某所にあるニトリで働いているのですが、ちょっと前までその駐車場に変なおじさんがほぼ毎日来ていました。
駐車場の隅っこの方で指揮者みたいに両腕をぶんぶんと振っているのです、ずっと。
だから私とか他の店員は彼を「指揮おじさん」と影で呼んでいました。
指揮おじさんは見た目はどこにでもいる普通のおじさんですし、別にお客様や店員にちょっかいを出すわけでもないので基本放置していました。
もちろん、最初の方は男性店員が注意に行ったことがあるみたいでしたが効果はないようで、指揮おじさんは昼ごろに来てはいつの間にかいなくなる、を繰り返していました。
そんなある日、私は仕事の都合で夜遅くまでニトリに残らないといけない事になりました。
店を出たのは大体11:30くらいだったと思います。
スタッフ用の駐車場に向かおうとした時、いつも夕方までには居なくなっているはずの指揮おじさんが、こちらに背を向けて駐車場の隅っこに立っていました。
「珍しいこともあるな~」
なんて指揮おじさんを横目に車に乗り込んで帰ろうとした時、いつもとは何か様子が違うことに気づきました。
あれ?ってまじまじと指揮おじさんがいる方を見てみると、どうやら1人じゃなかったみたいで、指揮おじさんと向かい合うように大学生くらいの男の子が気をつけのポーズをして立っていました。
2人から距離はあったのですが、男の子が何やら口をパクパクとさせているのが見えました。
大げさに口を広げては閉じてを繰り返しているので遠くからでも分かったんです。
「指揮おじさんの知り合いなのかな」
くらいに思っていると、不意にパッとその男の子が消えました。
スゥーっと消えるのではなく本当に一瞬でいなくなったんです。
えっ!?と周りを見渡してもどこにもいません。
走ってどこかに行くなら駐車場ですから音が響くはずですし、そういうわけでもなさそう…。
?状態の私をよそに指揮おじさんは腕を振るのを止めると、トボトボと駐車場から出て行きました。
私は何だかんだ見てはいけないものを見てしまった気がして怖くなり、急いで家に帰りました。
そして、その出来事があってからうちのニトリで指揮おじさんを見かけることはなくなりました。
その後、意外なところで指揮おじさんに再会しました。
茨城県のK市に諸事情で出かけることがあったのですが、そこのニトリにいました、指揮おじさんが。
見た目も腕の振り方も間違いなく指揮おじさんでした。
店員さんに尋ねたところ、昼ごろに来ては指揮者の真似をしているとか。
もしかしたら全国のニトリを渡り歩いているのかも…。
その理由に、私が見た光景が関係しているのかどうかは分かりませんが。
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