ユビキリムシって知ってるか?
俺は九州の人間なんだけどよ、いまくらいの季節から夏にかけて出る夜の虫なんだ。
まぁ所謂子供を怖がらせるための迷信なんだけど、それにまつわる事件の話。
長いからざっくり話すわすまんな。
ユビキリムシってのは、日の長くなる季節に子供を早く家に帰らせるように大人たちが言い始めたもんなんだ。
それはいろんな動物の指を切って食べる虫で、暗くなると人の指も切って食べるってもの。
俺の住む村は小学校が一つしかなくて生徒も少ない。
そこでは給食制になってて、2人のおばちゃんが小さな食堂みたいなとこで毎日給食を作ってくれる。
そのうちの1人のおばちゃんは、いつもしつこい位ユビキリムシのことをうそぶいて子供達を怖がらせてた。
ある日の給食で、汁物に今まで食べたことのないようなお肉が入ってたんだけど、それは例のおばちゃんが山で捕まえた獣の指だった(結局なんの動物か分からずじまい)。
そのおばちゃんは精神的な病気の初期段階だったらしい。
相方のおばちゃんも作業が分担されてるせいで気づかなかった。
少し経っていっしょに給食を食べてる先生が気づいて、そのおばちゃんは警察に捕まった。
つまり少しの間その肉を食べてた。
村の小さな小さな事件としてしか注目されなかったけど、それ以来ユビキリムシの話をする大人は居なくなったな。
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