26年前に実際に体験した話をします。
その日、高校時代から仲のよかった友人(以下友人)に連れられて、そのまた友人(以下A)の母校に卒業後の訪問に行こうとしていた。
時間は恐らく昼の3時頃だったと思う。
Aが中古車を買ったのでドライブに行きたいがための、暇つぶし的な訪問であったことを覚えている。
Aの母校は冬には山腹がスキー場になるほど標高の高い場所にあり、毎日自転車で1時間かけて通っていたのだそうだ。
ドライブ途中にAが言った。
「僕が3年苦労して通った道も、車で走るとこんなに早いんだなぁ」
そう言って、そこそこの坂道を、真っ黒のカローラレビンが快音を出して走って行く。
レビンには4人が乗っていた。
運転手はA、助手席に友人、左後ろに俺が乗り、右後ろにAの同校の俺には初対面の人間だ。
「この辺からはさぁ、心臓破りの坂で有名だったんだよ。帰りはスイスイだったけどな」
Aが山道の説明をしながらつぶやく。
俺の右に座っている奴(以下B)も話に続く。
「そういや、あの先に微かにトンネルが見えるだろ?心霊スポットで有名でさぁ」
「そうなんだよな。だから昼に来たかったんだよな」
Aが自分も苦手とばかり話に続く。
そうこう話している内に、車はトンネルへとさしかかった。
確かにずいぶん昔に作られたような、非常に横幅の狭いトンネルだった。
もしかしたら、軽自動車2台でもすれ違えないかも知れない。
もっともAの話だと、余り車は通らないようだ。
昼間でも結構不気味なトンネルだ。夜なんかくるもんじゃないな。と思いつつ、Aの車がトンネルを越えていく。
Aも恐がりな割には興味もあったようで、ゆっくりトンネルを鑑賞させてくれたことを覚えている。
「もう少し先を左に斜めに入る道があるんだよ。それを超えたら我が母校までもう一息」
Aがトンネルを超えて安心したのか、少し饒舌になったようだ。
「ほら、あそこだよ」
Aがまず言葉を放ち、Bも
「もう卒業して半年かぁ。懐かしいなぁ」
と続く。
この道を初めて通る友人と俺は、全くその斜めの道が見えなかった。
慣れとはすごいモノで、さすが3年通った道だなぁ。と感心したその瞬間!
Aが左ウインカーを出す。
「どこに道があるんだよ」
友人はその道が判別できないようだ。
もちろん俺にも全く見えなかった。
「何言ってるんだよ?もう50mもないぜ?ほら、そこだよ」
とAは指を差して俺たちに伝えてくれた。
だけど、俺に見えたのは。。。。ただの崖だった。
というより、遥か下に川が流れている谷だった。
「お前、僕をからかってるだろ?その先は谷底じゃねーかっ!」
友人が笑いながらAの肩を叩く。
「冗談なんて言ってねーよ。お前ら、目が悪いんじゃねーか?」
なんかこうなると、お互いの騙し合いみたいだ。
その瞬間、Aがハンドルを左に傾けた。
後で友人と話してわかったことだが、確かに下に谷底を見た。
間違いない。
俺は大声で叫びながら身構える体勢を取った。
その瞬間は見えていなかったけど、友人も恐らく同じような体勢を取っていたと思う。
「おわっ!!!!!」
2人の大声に驚いたAが急ブレーキをかけた。
急ブレーキはかかり、キーという音がする。
そんなはずはない。
俺たちは谷底へ真っ逆さまのはずだ。
うっすら目を開けると、そこは橋の上だった。
両側に赤色の手すりが付いている立派な橋。
橋の幅は元の道よりも広いくらいだ。
「お前ら、なんつー声出すんだよ。びびったじゃねーか!」
Aが紅葉した顔で、胸に手を置いていた。
「ご・・・ごめん。疲れていたみたいだ」
友人はAに詫び、無事母校へと着いた。
母校の先生用の駐車場に着くか着かない頃。
友人が話さない事もあり、俺がAに聞いてみた。
「なあ、あの橋なんだけど。俺には橋なんか見えなかった。ただの崖・・・というか谷だったんだ」
友人も慌てて口を開く。
「そ!そうだよ!橋なんか無かったんだ!」
あきれた声でAが答えた。
「じゃあ、どうやって渡ったんだよ。というか、お前ら僕をからかうにしては演技しすぎだろ!?」
4人はお互い自分の体験を話し始めた。
俺と友人は、橋が見えていなかったこと。
AとBは橋が見えていたこと。
お互い1時間も話しただろうか。
ふとしたときにBが口を開いた。
「幽霊の仕業じゃないか?」
「いや、でも心霊スポットってあのトンネルだろ?」
とAが話に続く。
「覚えてないか?」
BがAに話を投げかけ始めた。
「俺たちが2年生の時に、あの橋って作り替えられたよな。その後に、結構先輩とかが橋の先で事故に遭わなかったか?」
「あー結構あそこ事故が多かったよなぁ。特にできたての頃。2人ほど亡くなった事故もあったよな」
とAが続く。
この学校の通学は、行き心臓破りの坂。
帰りはスイスイって言ってたけど、ノーブレーキでで橋から道路に出るときに事故がよく起きたとのことだった。
反対側からは橋が見にくかったのだ。
「でも反対側からの車って、火葬場の・・・」
Aはそこまで言って言葉を失った。
「お前ら、橋が見えないって言ってたよな」
Aが真剣な顔で聞いてきた。
「もし、もしだよ?あの橋を渡らなかったら、その先に火葬場があるんだよ」
とAは話を続ける。
俺はその瞬間にいやなことに気づいた。
「もし道がなくて曲がれなかったら、火葬場に着くと言うこと?」
「途中にあるのは、多分今でも廃屋の家と、火葬場だけなんだよ」
とBが教えてくれた。
この話は実際に起こった話だけど、未だにどうしてもわからないことがある。
この現象は、トンネルから来る心霊現象か。
それとも、事故で亡くなった方の心霊現象か。
今は親友になっている友人と、話をする度に悩む。
俺たちは一度2人で、免許を取った後にあの場所に行った。
花束を2つ買って。
トンネルと橋に置き、祈りを捧げに行ったんだ。
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