都市伝説に『くねくね』っていう話、ありますよね。
白くてくねくねしていて、見ると……、てやつ。
それと関係はわからないけど、これはくねくねについてお父さんに教えたら、かわりに話してくれた話です。
「お父さんはそれの仲間をみたことあるぞ」
以下、父の話です。
お父さんの日課はポチ(うちの犬の名前です)の散歩だよな?
その日も…だいたい4時5時っくらいにポチ連れて歩いてきたんだわ。
コースは、うちをぐるっと囲むようにある田んぼの畦道。
まあ、見えるもんなんて、田んぼと畑とお墓くらいしか見えないわな。
私「うち、田舎だからね」
父「そのぶん、見晴らしはいいよな」
そう、見晴らしがいいから、人が歩いてるのなんて一発で見えるんだよな。
時間帯的にも犬の散歩ラッシュだから、お父さん以外にもちらほら犬連れて歩いてる人がいるんだわ。
向かいからきたときは、すれ違うときに挨拶なんかして。
うちのポチは臆病ですぐ飛びかかろうとするから、リードで押さえて準備してからすれ違うんだよ。
他所んちの人や犬、怪我させちゃ面倒だからな。
散歩するときはいつもだいたいそんな感じなの。
んで、そんときも向こうに人影が見えたのさ。
その時はお父さん、「あ、こっち来るかな」って身構えたんだけど…
田んぼを斜めに挟んだ向こうだったし、どうやらその人もおんなじ方向に歩いてるって感じだった。
だから、はち合わないだろうって思って、そのまま歩いてった。
「あの人も犬の散歩かな」なんて。
そのまんま、その人が見える位置でついていく感じで進んでたんだけど、あれっ?ってなった。
距離が変わらないんだ。
どんなに急ごうがゆっくり歩こうが、距離が変わらないんだ。
その人影の大きさがな、変わらないんだ。
そして、気がついたんだよ。
その人があり得ないほど真っ黒なことに。
影になってたとしても、見る位置が変わればなんかちょっとは変わるだろ?
だけれど、太陽を背にしようが右手にしようが、日向に居ようが影にいようが、ずっと真っ黒なまんまだったんだ。
顔もわからない。
誰なのかわからない。
でも決して見えない位置じゃなかった。
普通なら誰なのか判別できる位置に、確かにそこにいる。
なんだかわからない、人の形をした黒い影が。
お父さんと一定の距離を保ちながら、蠢いていたんだ。
お父さん怖くなって走って走って、引き返してきちゃった。
半分引きずられるように走らされたポチが、不思議そうに見上げてきたよ。
父が話してくれた話は以上です。
父はいまでも変わらず元気ですし、正直、くねくねとなんら関係もない話かもしれませんが、これを聞いたとき、確かにおんなじ恐怖を感じたことを覚えています。
もしかしたら、くねくねの亜種だったのかもわかりません。
「あれ以上見つめていたら危なかったかもな」と、父はあっけからんと笑いました。
コメントを残す