ちょうど2年くらい前の話。
うちの会社に中学の同級生(A)が入ってきた。
およそ20年ぶりに会うこともあり最初は挨拶程度だった。
ある日喫煙所でプカプカと煙を吐いていたらそいつが入ってきた。
カチカチとライターを押しているが火が付かない。
あとひと箱も吸えば使えなくなりそうなライターを渡すと初めて目が合った。
「あ・・・」
「ん?」
少し話し、そこで初めて同じ学年の奴だとわかった。
お互いにどこにでもある名前だったしクラスも2つ以上離れていた。
が、俺は知っていた。
そいつは超の付くヤンキーだった。
当時はガタイもよく髪も真っ赤だった。
高校は違ったので会うことはなかった。
今では短髪の白髪交じりだった。
お互いに老けたなーなんて話していると
「いつまでさぼってんだよ!おっさん!!」
と声がした。
その声は隣の課の奴(B)のものだった。
確か3つか4つくらい下で噂では10代のころは珍走団の頭だったらしい。
その噂も又聞きの様なものだったし課も違うので気にしたことはなかった。
「あ、すいません」
Aが頭を下げ右手をこちらに上げ離れようとした。
いきなりBがAの肩甲骨辺りを殴った。
俺は片手にたばこを持ちながら固まった。
中学の記憶がフラッシュバックした。
「やばい・・・やり返す」
と思った。
ところが
「すいませんでした」
と一言言っただけで見えなくなった。
Bという男は自分に逆らえないという立場の者には強かった。
年齢に関係なく暴言を言い、怒鳴り、時には先ほどの様な暴力を振るうガキの様な奴だった。
ただ、何らかのコネ入社ということで誰も何も言えなかった。
関わるのを避けていた。
退社時間になり駅でAに会った。
Aはポロシャツにチノパンという服装だった。
昔はダボダボのジャージとか一目にヤンキーという感じだったのに。
俺「おつかれ」
A「うん」
俺「Bってやな奴だろ」
A「・・・まあ。でも仕事と割り切れるからいいよ」
俺「そうか。大人になったな」
A「いろいろあったし大人にならなきゃよ」
俺「今度さ、飯、行こうよ」
A「給料日のあとならな」
俺「じゃあそうしような」
20年前には考えもしなかった。
Aと普通に話せてる。
ヤンキーだったAとは違い俺は普通の中坊だった。
あの頃は正直ビビってた。
でも今は懐かしさもあり楽しかった。
10日程して給料日がきた。
珍しく早く帰りたかった。
というかAと話したかった。
Aと飲みたかった。
よし、昼飯の時にでも誘うかなんて考えていた。
Aは今日もBの罵声に耐えていた。
入社してきたときは目立たなかった白髪が増えたようにも見えた。
それまでのBは周囲に満遍なく威勢を張っていたが最近はAにばかりだった。
何度か声を掛けたがAは
「教育ってやつだろ」
と返すのみだった。
今日はAの愚痴を聞き出してやろうと考えていた。
酒が入れば普段より話すだろうと。
B「おっさん!さっさとやれよ!」
ポカ!
A「・・・」
B「シカトかよ!」
ポカ!
A「・・・すいません。わからないんで教えてもらえますか」
B「考えろよ!」
ポカ!
A「先輩、ちょっといいすか」
B「うるせぇよ!さっさとやれってんだろ!」
ポカ!
次の瞬間Bは2mほど飛んだ。
A「もういい、こんなところ辞めたらぁ」
Bは背中を打ち真っ赤な顔でヒューヒューと息をしていた。
B「ヒュー・・・うちの後輩呼んで・・・ヒュー・・・殺すからな!」
B「ヤ○ザ呼ぶからな!」
B「詫び入れるなら100万持って来い!」
女性陣は固まって動けない。
上司たちもオロオロとしてるだけだった。
A「誰でも呼べ」
そう言いながらうずくまるBの腹部をサッカーボールキックで蹴り上げていた。
Bは入院。
Aは退職。
退院後Bも退職。
反社会勢力とのつながりが問題視されたからだった。
後に全てハッタリだとばれるが。
珍走団の話も喧嘩負けなしも全て。
実はAは過去に犯罪を犯し収監されていた。
何の罪かはわからなかったが数年は入っていたようだった。
そしてまた壁の向こうに戻った。
前回よりも長くなるようだった。
なんであの時Aとちゃんと話せなかったのか。
「辛いなら力になる」と言ってやれなかったのか。
確かにAは過去に犯罪を犯した。
だからそんな場所にも入った。
それ以前にヤンキーだったかもしれない。
でも今のAは楽しく話せる奴だった。
それは間違いない。
Bの様な小悪党に腹を立て暴力を振るった。
許されることではないかもしれないが止めることが出来なかった俺にも、周りにも責任がある。
だから明日会ったら謝るよ。
ごめんな、章宏
–END–
『マジ(年齢?歳・♂)』さんからの投稿です。
ありがとうございます。
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