ずっと大昔の話。
もう時効だと思うので書く。
新人研修にまとめ役で付いて行ったのだが、その先で俺と同じ役で来てやたらと威張るAと言う人物が居た。
空手をやっている事が自慢らしく、蹴りや突きを披露。
見た目、体格も良いAのそうした行動は確かに迫力があるのだが、空手をやっていた俺から見るとどうも変に感じた。
蹴りは腰を浮かせて行うので軸足はブレブレだし、突きも振りかぶる感じで隙が大きい。
とは言え、俺自身も空手をやっていたのは中学生の頃までだし、色んな流派があるのでそうした型だと思ってた。
何より、俺が通っていた道場の先生が癖のある蹴りを得意としていたのでそんなもんだと思った。
ただ気の毒なのはAが連れてきた新人達で、Aの蹴りや突きの練習台にされていた。
そんな矢先に事件は起きる。
研修先は寮があってそこに泊まっていたのだが、風呂から出て自分の部屋に向かう途中、俺が連れてきた新人の一人がAに酷く罵倒されていた。
慌ててどうしたのかと聞くと、
「俺の突きを避けた。新人のくせに生意気だ!」
みたいな感じで、要はサンドバッグに成れという事らしいのだが、
「空手をやっている人が無闇に手を出すのは行けないんですよ。」
と俺が言ったら更にヒートアップ。
「素人が分かったこと抜かすな!」
と言いながら蹴りをはなってきた。
奴は右蹴りを繰り出したのだが、その下側を俺の左蹴りが少しはね上げる形で入りながら、次の瞬間には親指を立てたまま、奴の左側内腿に打ち込んだ。
これが俺の習っていた道場の先生が得意とする蹴りで、先生のは手加減しても痛かったのだが、無意識に繰り出した俺は全力で打ち込んでしまった。
気付いた時には左足を押さえながら悶絶するAが
「すいませんでした!」
と自分でもパニックになりながら新人を引っ張ってその場は逃げた。
翌日からはAはすっかりおとなしく成り、連れてきた新人達からも半ば馬鹿にされる形で扱われてた。
あと、蹴りを入れて分かったのだが、Aは体格が良いのではなく単なるデブだった。
筋肉が全く無くて、凄く柔らかかった。
親戚の赤ちゃんの足がぷよぷよなの見たらそんな事思い出したよ。
–END–
『そろそろ(年齢?歳・♂)』さんからの投稿です。
ありがとうございます。
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