私が中学生の時の話をさせて貰います。
10年位前の話になりますが、当時私の小学生の弟(A)がよく学校で怪我をしてきました。
怪我も転んだりして出来る傷ではなく、カマイタチというのでしょうか。
何かに切られた様な傷を、週に2,3回作ってくるという事が2,3ヶ月続きました。
そんな時、私が学校から帰ると、家に親戚のお兄さん(B)がやってきていました。
Bさんは私より5歳年上で、私の県から4,5つ離れた都会に住んでおり、子供の頃から良く遊んでもらっていたお兄さんです。
しかし子供の頃は年に2,3回会って遊んで貰ったのですが、その時は確か2,3年振りの再会だったと思います。
私「どうしたのBさん。遊びに来たの!?」
私は久しぶりの再会で、色々と遊んで貰えると思って大興奮。
当時の私には憧れだった都会の話や、流行を教えて貰えると思って嬉しくなりました。
B「いや~(私)ちゃんと遊びたいんだけどね。ちょっと呼ばれたから来たよ」
そう言うと、Bさんはそのまま私の両親と一緒に家の大広間で話をし始めました。
両親からは「話が終わるまで自分の部屋で遊んでなさい」と言われ、Aと遊んでいた記憶があります。
何時間位話をしていたのかわかりませんが。
母が夕飯の用意ができたと、私とAを大広間に呼びました。
大広間にはいつの間にかBさんの叔父(C)さんが、Bさんと同じ県から来ていました。
そして全員で揃って夕食。
でも何故かBさんだけは、用意された夕食に一口も手をつけずに微笑んでいました。
ご飯が終わった後、Bさんが口を開きました。
B「(私)ちゃん。今からお風呂に入って、少し寝てちょっと付き合ってくれる?」
私「え?今から寝てから?どっか行くの?」
B「明日お休みでしょ?だから夜更かししても平気だよね?」
いつもと違うBさんの雰囲気に少しおかしいと思いながら、両親の顔を見ると父が一言「言うことを聞きなさい」と言いました。
私は訳も分からずお風呂に入らされ、その後、自分の部屋で寝ました。
そして午前3時。
目覚ましが鳴り、母に起こされ、急いで着替えて、玄関に行くと、そこには黒いスーツを着たBさんとCさんがいました。
何事かと思ったのですが、何も言葉が出ず、Bさんはいつもとちょっと違う真面目な顔で口を開きました。
「Aの学校への通学路教えてくれる?」
そのままCさんの車に乗り込み、私は家から学校までの通学路を教えました。
時折通学路の途中で車を止め、その度にBさんは車を降りて辺りを見渡したり、(今思うと拍手を打っていた様な・・・)
道に手を置いたりしながら学校へと向かいました。
小学校は真夜中という事もあり、誰もいません。
今と違って防犯のセンサーなどもついていない田舎の小学校だったので、校門の扉も開いており、誰もが入ることが出来る状態でした。
真っ暗な学校に向かって歩いていくBさん。
時折校舎を見ながら、「駄目だなぁ・・・」とか「うまく見えないなぁ・・・」とか、ぶつぶつ言っていました。
一緒についてきていたCさんは、私に「怖くない?大丈夫?」とか「きっとすぐ終わるから」とか色々言ってくれて、怖い気持ちを和らげてくれました。
小学校に来て何分か経ったかわかりませんが、強烈に覚えている瞬間が訪れました。
それまで背を向けていたBさんがいきなり振り返り、私たちを指指し、
「そこ。来る」
そうBさんが呟いた瞬間、子供の笑い声と共に校舎の中を駆け回る足音が、私とCさんの横を通り抜けていきました。
私もCさんも激しく動揺して「今の何!」と聞くと、Bさんは一言「だから来るって言ったじゃん」と、何事も無かったかの様に辺りを見回しました。
そして一言「今日は無理だから帰ろうか」と言って、乗ってきたCさんの車で私の家まで帰りました。
家に帰ると心配そうな顔で待っている両親が居て、私はいつの間にか母と一緒に寝ていました。
そして起きると、既にBさんとCさんは帰っており、両親もそれ以降何も話してくれませんでした。
それから二週間位経ったある日、学校から帰ると家にBさんが居ました。
Bさんは私の両親とにこやかに談笑しており、前回とは打って変わって明るい様子でした。
「(私)ちゃんおかえり。帰ってすぐで悪いんだけど、ちょっと教えてくれる?」
私は何だろうと思いながら、大広間のテーブルに座りました。
「Aと(私)ちゃんが通ってた小学校の、七不思議を教えてくれない?」
変な質問だなと思いながらも一つずつ答えていくと、6つ目の話に両親の顔色が変わりました。
その瞬間にBさんも「やっぱりね」と言って、「もういいよ」と言いました。
Bさんはその後「じゃあ帰るね」と言って、両親に駅まで送られていきました。
翌日、母がBさんの家に電話を掛けると、Bさんは家に帰っていないという回答がありました。
Bさんの両親は「いつもの事だから気にしないで」と母に言ったそうですが、電話口で必死に謝っていました。
その後Bさんは一週間ぐらいして家に帰ったそうですが、私はBさんとは3年間会うことが出来ませんでした。
3年後Bさんと会ったのは親戚のお葬式の時です。
両親と共に親戚のお葬式に行った時、葬儀場の前で
「帰れ!この××××(なんていったのか聞き取れない罵声でした)!」
と罵られて、追い出されるBさんが居ました。
Bさんは、Bさんの両親と祖父母だけが葬儀場に入るのを見て、一人、駅の方に歩いていきました。
親戚の葬儀が終わり、Bさんの両親と祖父母と一緒に私の家に帰りました。
そして思い切って私はBさんの祖母(D)に聞きました。
「Dさん。なんでBさんはあんな事されるの?何をしたの?」
そう言うと、Dさんは私の両親とBさんの両親の顔を見て、話してくれました。
私の家は田舎で言う名家の部類に入るらしいのですが、その本家にあたる家系に代々伝わっていた、御祓いの方法があったそうです。
本来であればそれは本家の人間だけが代々継ぐらしいのですが、先代は分家にあたるBさんが一番力があると言って、Bさんに教えてしまったそうです。
その方法は一子相伝で、教えて貰った人だけが使えるという事もあり、本家に当る人やその取り巻きの親戚筋からBさんは恨まれたそうです。
しかしBさんは折角教わった事だからと、頼まれた時に御祓いをしていたそうです。
3年前に私が立ち会ったのはその御祓いの儀式であり、Bさんは私の両親に頼み、学校に入る許可を取り、御祓いをしたそうです。
(私の親がPTA会長だったのと、家が有名だった為、Bさんは研究という事で入ったらしいです)そして御祓いをした場所というのが、学校の図書室。
私が学校の七不思議を話をした時に、両親が表情を変えた場所でした。
Bさんのやる御祓いは通常の物とは違うらしく、自分の中で吸収して昇華させる為、いつもやると2,3日居なくなったり、奇行に入るそうです。
3年前は、私の亡くなった祖父がBさんの元に現れ、Aを救ってくれという頼んだそうです。
それから1年後、私は上京しました。
その際に社会人になっていたBさんと連絡を取り、会う事が出来ました。
そして私はBさんに聞きました。
どうして図書室だったのかを。
するとBさんは話してくれました。
「だってあそこで死んでるからね。(私ちゃん)のお祖父ちゃんの弟」
後で知ったのですが、小学校のあった場所は当時、戦争で空襲にあい、そこで亡くなったそうです。
しかし祖父が亡くなった後、それを知っているのはDさんだけで、Dさんから両親に話をしたそうです。
そしてもう一つ聞きました。何故Aだったのか。
私は学校に通っている間、Aがあったような現象は一度もありませんでした。
それを聞くとBさんは教えてくれました。
「それは(私)ちゃんが女の子だったから。だって、代わりが欲しかったんだよ。戦地に行ける」
Bさんとは会ったのはこれが最後でした。
両親伝いに聞いた話では、未だにBさんは時折頼まれて御祓いを続けていて、その度にDさんが
「もう勘弁してやってくれ、許してやってくれ」
と言っているそうです。
そのせいかBさんは奇行が続き、定職についても続かない状態になっているそうです。
長い上に判りにくい。2、3年とか曖昧さが多すぎ