先日帰省した時に、タクシーの運ちゃんしてる弟から聞いた話を書いてみる。
あんまり怖くないかもだけど。
夜0時近い時間に駅近くで、サラリーマンらしいスーツ姿の男を乗せたらしい。
ところがその男酷く酔っ払ってて、乗ったもののはっきりと行き先を告げず、
「真っ直ぐ走れ」
だの
「今の交差点左だったのに!」
だの、挙句
「こんなんじゃ代金払えねーなぁ」
とか言い出した。
弟は
「払えない」
と聞いた時点でタクシーを止めて、ドアを開けて、
「お客さん、悪いけど代金払うつもり無いんだったらここで降りてくれる?ここまでの代金いらないから」
と言ったらしい。
まぁ当然なんか大声で文句を言ってくる酔っ払い男。
その時、視界の隅に人影が写ったのでそっち見たら、タクシーの開けているドア側にある歩道に、女性が立ってたんだって。
ポニーテールで白っぽいワンピ+黒のレギンス(弟は黒の股引みたいの、って言いおった…)。
おとなしそうな感じの子。
ちょっと困ったような顔をしてこっちを見ていたので、もしかして乗りたいのかな?って思ったのと、早く酔っ払い男を降ろしたかったので、
「お客さん、悪いけど次のお客さんがいるし早く降りてくれない?」
って言ったんだって。
そしたらその酔っ払い男
「あぁ?」
とか言って、開いてるドアから身を乗り出した。
弟は女性に危害が及んだらまずいと思って運転席から出たんだけど、男は女性の顔を見た途端、飛び跳ねるみたいな勢いで奥の席まで体を移動して、
「車出して!」
って言ったらしい。
いや、お前を乗せていく気ないしと思ってたら、男が
「早く!お金もちゃんとあるし先に払うから!」
と5千円札を渡してきた。
まぁ金を渡してくれたなら…と思って、
「じゃあまぁ乗ってっていいですけどね」
って言ってから、とりあえず待ってる女性に謝っといたほうがいいかな?と思って女性のほう見たら、にっこり笑ってこっちに向かって頭を下げたから、事情をわかってくれたと思って、弟も
「すんませんね」
って軽く頭を下げてタクシーを出した。
その後何事もなく男を家まで送ったんだが、5千円もかかる距離じゃなかったしお釣り渡そうとしたら、
「釣りはいい!」
って叫んで、そのまま走って家の中に入っていったらしい。
不思議に思いながらタクシーを出そうとしたあたりで、目の前…というか少しはなれた街頭の下に、さっきの女性が立っている。
似た洋服着た別の女性…と思いたかったが、その女性が弟の方を見て頭を下げたのを見てゾッとしたらしい。
だってタクシーで走った距離的に言っても、生きた人間とは思えなかったし。
何よりも景色からなんか浮いて見えるなと思ったら、影がなかったし。
弟はそのままバックで交差点まで下がってから向きを変えて、会社に帰ったらしい。
バックで下がる間に、女性の姿はいつの間にか見えなくなってたらしいけど。
で、それから何日かしてタクシー会社に電話があったんだって。
要約すると、
『この前お前んところのタクシー乗ったら、途中で降ろされそうになった上つり銭渡しやがらなかったぞゴラァ』
弟は、あー、絶対あん時の酔っ払い男だわーって思った。
でも会社にその件の経緯は既に話してあったから、事務の人が対応してくれたらしいんだけど、とにかく家にわびにこいの一点張り。
「住所と名前、電話番号聞いときましたけど、どうしますかね?」
って上司も交えて話し合ってたら、またその男から電話。
今度は上司が対応したけど、何か変な応対。
電話が切れた後、弟が聞いたら、
「『さっきの件は自分の勘違いだったからこなくていいです。オレの住所誰かに聞かれても絶対教えないでください』とか言って電話が切れた」
と。
「あの女性の霊は、絶対あの男がらみだとおもう。電話からして、絶対あの男のせいで自殺したとかやね」
と弟は言ってたが、自分にはそれ以上に気になる事があった。
弟よ、多分その女性、お前が
「乗ってっていい」
って言ったから、お前のタクシーに乗って酔っ払い男の家までいけたんだと思うぞ。
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