江戸川沿いを一人で歩いていたら、前方からスポーツ刈りで白いタンクトップ、短パンの男が走ってくるのが見えた。
遠目で見ると、風でユラユラとたなびいているように見えた。
近づいてきてわかった。
男は体の厚みが布切れほどしかなかった。
服も体と同じようにぺしゃんこで、本当に全身が風でたなびいていた。
男はにこにこ笑いながら近づいてきて、すれ違いざまに
「ビビってんじゃねーよ、バカ」
と笑顔のままで言い、バサッと大きい茶封筒を投げつけてきた。
茫然としている俺を置いて男は走り去って行った。
封筒の中を見ると、新聞の折り込みチラシが30枚ほど入っていた。
古いもののようだが、どれも霊園や葬儀屋の広告だった。
どのチラシも地域に一貫性はなく、全国各地のチラシだった。
怖くてすぐ捨てた。
男はその後見ていない。
今度見つけたら遠くから写メ撮ってやる。
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