小学5年生の頃の話。
その日は林間学校でした。
皆で作るご飯、お泊まり、とくれば後は肝試し。
男3女3の六人グループで森の中を懐中電灯だけで散策して宿舎に戻る、といったありふれたヤツでした。
その森は地元では自殺の名所と名高く、昼間でも足を踏み入れたくない場所です。
よりによって私はしんがりをつとめるハメになりました。
途中で先生たちが潜んでいて、度々私たちを脅かして来ました。これが意外に怖かった。
そしてゴール近くの目印である小川と小さな橋に差し掛かった頃、私はこの日一番の恐怖を味わいました。
何かにつられるように橋のそばにある大木を見上げると、明らかに首吊り死体と思われるモノが静かに揺れていました。
前をいく友達は気付いていない様子。
私は、きっとアレも先生達がしかけたモノに違いない、と思い込んで、その場を足早に後にしました。
宿舎の明かりが見え始め、皆の緊張の糸が緩みきった頃に、最後の脅かし役が近くのサトウキビ畑からヌルっと現れました。
白い着物をきたソレはうつむいていて顔は見えませんでしたが、『こっちへおいで』と手招きをしていました。
今までとは質の違う脅かし方で、妙に不気味でした。
私達はワーキャー言う事もなくその場を走り去り、宿舎に駆け込みました。
「最後のが一番怖かったね~」
と話ながら、先生たちに文句を言うと、先生たちの顔色が変わりました。
「そんな役いない」
と。
担がれてると思った私は、先にゴールしていたグループや後から来たグループにも話をしましたが、誰も見ていない…
うすら寒くなってきた私は、
「じゃあ橋のそばの首吊りは?」
と先生達に聞きました。
それがトドメになったように、先生たちは肝試しを中止しました。
後日、ユタのおばさんが家に祈祷をしにきました。
手招きの話をすると、
「それはこんな感じだった?」
と、招き猫の要領で手を動かしました
私がうなづくと、
「それは『こっちへおいで』じゃなくて、『こっちへ来るな』って意味だよ」
と言っていました。
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