小学生の頃
放課後、友人Tと校庭での遊びを終え教室に戻ると、
オカルト好きなB子と数人の女子が、コックリさんをやっていた。
当時『学校の怪談』と言う本が馬鹿売れしていて、ちょっとしたブームだった。
中でもB子は自称霊感少女であるらしく、
「コックリさんをやる時は、私がいれば大丈夫。何か取り憑いても、私が御祓いしてあげる」
と言って、みんなから慕われていた。
Tは
「アホくさ」
と軽蔑したような顔で女子を睨み、
「コックリさんなんているわけねーじゃん」
と喧嘩を売り始めた。
するとB子は、
「そういう事言わない方がいいよ。呪われちゃうよ」
と応戦。
「はっ?馬鹿じゃねえ?俺んち寺やってるから周り墓地だけど、人魂の一つも見た事ねえよ!」
とTが吠えます。
すると女子の中の一人Cちゃんが、
「でも、これ勝手に動くんだよ・・・嘘じゃないって」
と怖がりながら、コックリさん体験を話す。
そうよそうよと女子たちが調子に乗り出し、
「だったらK君(僕です)とTも一緒にやろうよ」
と言い出した。
Tは
「上等だよ」
とやる気まんまん。
僕は恐がりだったので遠慮すると、
「じゃあKは先に帰ってろよ」
とT。
帰っても良かったんだけど、僕はCちゃんの事が好きだったので、残って見ている事にしました。
いざコックリさんが始まりましたが、僕はCちゃんの事ばかり気にしていて、あまり経過を見ていませんでした。
憶えている事と言えば、10円玉が動いた際、Tの
「誰だよ動かしてんの。わかってんだぜ」
と言う声がしきりに聞こえていました。
時間も経ち、例の
「コックリさんお帰り下さい」
のくだりへきました。
すると、怖い話で良く見かける『NO』を繰り返し、帰ってくれないとい事態になりました。
見守る女子が動揺し始めると、B子は
「大丈夫。私の霊感で何とかするわ」
と、インチキ臭い事を言い出す。
Tはその状況を馬鹿にしたような笑みで見つめ、
「はいはい。終り終わり」
と、コックリさんの紙をぐしゃぐしゃに丸め投げたのです。
「ちょっとあんた!何やってんの!」
と怒るB子。
「これで俺呪われたんだろ?へっへっへ。どうせ何も起きないけどな」
とフラグを立てるT。
どうして良いのかわからず混乱する女子たち。
ちょっと涙ぐんでいるCちゃん。
Cちゃんに
「大丈夫だよ」
と言ってやりたい僕。
そんなこんなで、混乱しつつもお開きになり、帰宅する事になった。
その日の夜、Tの家に泥棒が入った。
学校では
「呪いのせいじゃない?」
と噂されていたけど、
「何で呪いが盗みするんだよ。あほか」
とTは余裕だった。
何でも、大した被害はなかったらしい。
僕も、これはさすがに偶然だろ、と思っていた。
数日後、Tが車に撥ねられた。
Tの自転車はタイヤに潰されたが、Tにはかすり傷すらなかった。
これは呪いのせいだろと思ったけど・・・
Tは
「いや、完全に俺の不注意。曲がり角かっ飛ばしてったからな」
と笑っていた。
何でも、その曲がり角では、前々から何度もぶつかりそうになっていたとか。
「あれだな。ああいう時って、スローモーションに感じるって本当だな!ノロイのせいか」
などと冗談ぶっこいていた。
更に数日後、男友達数人で鬼ごっこをして遊んでいた時、Tが階段を踏み外し下まで転げ落ちた。
みんなその場で凍って、
「あわわ」
になってしまった。
もしかして何者かに突き落とされたんじゃ・・・と思った。
が、Tはピョンと立ち上がり、
「危ねえ!階段の途中に犬の糞があった!踏まないようにしようとしたら落っこちたぜ!」
と爆笑。
僕たちも安堵と面白さに爆笑。
Tは擦りむいただけで済んだ。
更に数日後、図工の時間、Tは彫刻刀で指を怪我した。
「呪いだ!!」
とみんなが騒いだ。
B子が
「T君の手を掴んでいる白い手が見えた」
と言って怯えたが、Tは怪我した指を見せびらかせながらプゲラっと笑った。
勝手に手が動いたとかそんなんではなく、指を広げて置き、指の間をトントン彫刻刀を行き来させる、度胸試しに失敗したからだった。
(エイリアン2で、ヒューマノイドがやってたやつです)
ただ、普段面白い人気のあった先生にこっぴどく怒られ、凹んではいた。
その他にも、Tの身に色々な事故怪我はあったけど、呪いなのかと言われればどれも微妙だった。
学校では
「Tは呪われているが、それ以上に強い守護霊に守られている」
と噂された。
ただB子だけは、
「呪われている」
と言い続けた。
ある日、遠足にて川辺の飯盒炊飯をやっていた。
「川には入るなよ」
と先生は言っていたが、そう言われて守る者もいなく、
食後にはみんな川に入ってばしゃばしゃ遊んだ。
比較的穏やかな流れだったし、そんなに深い場所もなかったので、先生も笑って見ていた。
しかし、事故が起きた。
B子が溺れたのだ。
川の底にあったガラスの破片を踏んでしまい、パニクったそうだ。
助けたのはTだった。
「呪われているのは私かもしれない・・・」
と泣きじゃくっていたが、Tが、
「心配すんな。呪いなんかないって。それに呪われるんなら俺だろ?お前は平気だよ」
と励まし、安堵したようだった。
それ以来、B子はオカルト的な事を言わなくなったし、Tの事も悪く言わなくなった。
というか、絶対好きになってた。
ある日、Tと二人で帰っている時に、
「ねえ、T君は怖くないの?やっぱ呪いって嘘かな?」
と僕は聞いてみた。
Tはちょっとだけ真面目な顔になって、
「誰にも言うなよ」
と前置きをすると、
「実はあのコックリさんやった日によ、夢の中に狐が出てきた。 んでビビってさ、父ちゃんにお経唱えてもらって、近くのお稲荷さんに油揚げ持っていった。 だけど、その後でも俺、怪我とかしてんだろ。ってことは、呪いのせいなんかじゃなくて、ただ単に俺が不注意だってことじゃん」
と言って、Tは恥ずかしそうに笑った。
良く解らなかったが、何となく納得した。
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