数年前に母方の祖母が亡くなった。
私たちが住んでいたのは岩手で、母の実家は新潟だった。
遠いので頻繁に向こうの親戚には会えなかったが、毎年夏に車を走らせ家族4人、父、母、兄、私で会いにいっていたし、年に数回は互いに梨やお菓子、手紙などを送りあっていた。
私が高校生になった頃、いつもは夏休みを使って新潟へ行っていたけれど、夏休みも忙しく、
「高校生だから、もう少したったらまた皆でいこう」
と母は言った。
そんな時、向こうの祖母が倒れた。
一度家族で病院へ見舞いに行った時、祖母は私の制服を見て
「セーラー服なんだねぇ、可愛い、可愛い」
と言ってくれた。
祖母は去年会った時より見違えるほど痩せていて、髪の毛もなかった。
年に何度も会いには行けず、母は頻繁に電話をするようになっていた。
その次の年に祖母の体調が急変し、急遽母は休みを取って次の週に一人で会いに行くことになった。
母は私たちに携帯を向けて
「おばあちゃんに聞かせるから、何か喋って」
と、嬉しそうにムービーを撮った。
慣れないことに少し恥ずかしくてろくなことも言えなかった気がする。
「おばあちゃん、頑張って」
ぐらい。
祖母が亡くなったのはその週末だった。
葬式は祖母が褒めてくれたセーラーの制服を着て出た。
葬式が始まる前、部屋で母と二人でいると、
「声…聞かせてあげれなかったね、間に合わなかったね…」
と今まで聞いたことのないようなか細く、涙ぐんだ声で話した。
つい先日、嬉しそうに、声を聞かせてあげれるとムービーを撮っていた母の姿を思い出し、涙が出た。
そのムービーがまだ母の携帯に残ってるかは分からない。
でもそれから母がふと祖母の話をする度にあの時の姿が浮かび、私は涙をこらえるようになった。
ポポさびしい