オレがまだ中学の頃の話。
バスケ部だったから、体育館の中で練習をしているとき、他校の生徒らしき集団が見学(?)に来ていた。
体操着を見るとどこかの学校だと思ったが、どこの学校かは分からなかった。
その集団の中の一人の女がオレに話しかけてきた。
なぜか妙になれなれしくて、前に一度会ったことがあるとでもいうような接し方。
こっちとしては、なんとも言えない気分で。
なんで、オレに話しかけてるんだ?という思いがあった。
そして、部活がおわり学校を出た。
なんとなく体育館を振り返ってみると、体育館のずっと高い所にある窓(ハシゴを使って登らならなければならない)から、 さっきの女が直立の姿勢でこちらを見ていた。
その時の女の表情は無表情で、なぜそんな誰も登らないような高い窓から見下ろしているんだろうと思った。
しかも、俺と目があったにも関わらず、ただ無表情でこちらを見ていた。
そのときは、不気味さより苛立ちがあったように思う。
家に帰宅して、夕食を食べて、2階にある自分の部屋でくつろいでいたら、下の方で、母親とお客さんが話している様な声が聞こえてきた。
結構、長い間話し声が聞こえてきているので、気になって部屋から出て話し声に耳を傾けた。
なんだか深刻そうな話題のようで、子供心に『これは、ヤバい事の話』だなという感じがわかった。
そして階段の下を見下ろすと、母親とさっきの女が1対1で会話をしていた。
母親はいつにもまして、早口で深刻そうな話し方。
その女は今にも泣きそうな話し方だったのを覚えている。
その翌日だったとおもうが、うちで飼っていた犬が行方不明になった。
首輪だけがきれいに残されていた為、きっと誰かが悪戯したのだろう。
オレはその女がやったような気がしてしょうがなかったが、証拠もないため誰にも言わなかった。
なぜ、俺がそう思ったのかという理由は、その女が前日、俺の母親との会話で泣きそうな話し方をしている中に、 怨念のようなものが含まれていたのを感じたからだ。
前日の会話で何があったのか俺には分からなかったが、その女が学校で俺に直接接触してきた事や、母親と何か深刻な話しをしていたことからも分かるように、自分達の家族に関わっている事は確かだった。
俺はそのことが気になっていたが、親に直接聞くことは、なにかタブーに触れてしまうような気がして、怖くて聞けなかった。
それから、数日後の夏。
中学生が水死体で発見されるという事件があった。
その生徒は他校の生徒だったが、中学生の頃はこういった類の話はあっという間に広まり、学校内はその話でもちきりだった。
そしてその生徒の顔写真も、うちの学校ではなぜか出まわっていた。
俺がその写真を見たときは驚いた。
その女だったからだ。
自殺…なぜ…なにがあったんだ。
今現在、なにがあったのかは分からないままです。
家の中でもその話題はしません。
でも、なぜ俺が今ごろになって、この話を思い出したのかと言うと、最近、その女が夢のなかにでてくるからなんです。
あの女が体育館の窓から見下ろしている時の情景が、ホラー映画の様に不気味な映像になって、夢にでてくるんです。
そして何よりも不気味なのは、その女の顔を見ると、のっぺらぼうやマネキンのように何もない白い顔。
どんな顔だったかは、今でも思い出せません。
ぼぼ
洒落怖
腹違いの姉か妹だったりして。
ポポプラジル