田舎の祖母が入院してるので実家に数日戻ってきた。
祖母はあんまり長くないらしい。
祖父母は九州に住んでて祖父は完全に頑固一徹の昔ながらの親父って感じ。
男子厨房に入らずを徹底して、晩酌は日本酒(必ず熱燗)・ビール・ワインをその日の料理と気分で飲み分ける。
当然、すべて祖母が準備。
熱燗がちょっとでもぬるいと、口を一度つけたあと
「ぬるい」
と一言だけ言い、無言で祖母に温めなおすよう指示。
祖母は
「すみません」
と言いその熱燗をもって台所にいき、温めなおす。
祖父は祖母を怒鳴りつけるということはなかったが、とにかく一貫してそんな態度だった。
小さい頃からこまごまとよく働く祖母を呼びつけて
「茶」
だの
「新聞とってこい」
だの召使のように扱う祖父をみて、なんだか理不尽なものを感じていた。
その反動か俺は小さい頃から母親の手伝いをよくやったし、今も家事を積極的に手伝うようにしている。
その祖母が先月いきなり倒れたらしい。
検査の結果癌発見。
しかももう手遅れで、手術して無駄に体力奪うよりこのまま…という方針に決まった。
で、GW中は仕事が忙しかったので、連休明けて仕事一段落して長めの休暇もらっていってきたんだが、実家帰ってびっくりしたのが、祖父が連日祖母の病院に朝からいっているらしい。
ほとんど一日病室で二人で過ごしているそうだ。
病院にいったら祖父はいなかったが、しばらくしたら祖父が帰ってきて、その手には売店で買ってきたらしきプリン。
祖母が食欲が落ちてきたので食べやすいものを、と思って買ってきたらしい。
見ていると祖父が良く動く。
鞄から祖母の着替えを出したり、ちょっとした買い物やなんやと。
俺がそろそろ帰ろうかとしていると、祖父がいきなり
「そうだ。せっかくだから写真を撮ろう」
といいだした。
祖母が
「こんな痩せてガリガリの写真なんて撮らないでください。葬式には若い綺麗なころの写真を使ってくださいね」
と冗談めかしていうと
祖父は
「病人だし飯も食わんのだからガリガリなのは当然だ。今のお前が綺麗じゃないという奴がいたら俺がぶん殴ってやるよ」
と。
祖母は
「まぁまぁ・・」
なんて笑ってたけど、ちょっと泣いてたんだよな。
なんだかんだ言いながらこの二人は夫婦なんだなぁと思ったよ。
祖父母はまた仲良く地獄暮らし。
ばけらった