高校生2年生のときの話です。
わたしは夏休みの1か月を利用して、仲良しのFちゃんとハワイ大学の夏期語学講習に参加しました。
社会人の人もいてなかなか貴重な体験でした。
そのなかの1人、22歳のYさんはすらっとした美人で、話しやすくてすぐに仲良くなりました。
ある日、自由時間後にわたしたちが部屋に戻ると、隣室のTちゃん(当時16歳)が駆け込んできたのです。
いつも元気な子なのに、白い顔をして怯えていました。
「あたしさっきまで1人で部屋にいたんだけど、インターフォンが何度も鳴るの。10回以上だよ。そのたびにドアを開けると誰もいないの。初めはいたずらだと思ったんだけど、なんかおかしくない?」
男の子のいたずらじゃないのー?なんて言ったのですが、Tちゃんがあまりに動揺しているので、わたしたちは彼女を連れてYさんの部屋に行きました。
Yさんが、
「子どものころから霊感が強い」
と言っていたからです。
Tちゃんの前のイスに座って片膝を抱えると、Yさんは考え込むような仕草をしました。
「ヨーヨー…。『ヨーヨー欲しい』って言ってる」
Yさんが
「ヨーヨー」
と言った瞬間、Tちゃんが、
「なんで!?」
と叫びました。
「ヨーヨーって、あたしがきのうゲーセンで取ったやつでしょ?さっき1人で部屋にいるときに遊んでたんだけど……そんなこと誰も知らないはずだよ……」
Yさんは困った顔でTちゃんを見ました。
「きのうみんなでダイヤモンドヘッドを回ったでしょう。その途中で、男の子がついてきちゃったみたい。小さな男の子。Tちゃんの遊んでたヨーヨーが欲しい、遊ばせてって言ってるよ」
「いやー、どうしたらいいのー!」
Tちゃんは泣き出してしまい、霊体験とは無縁だったわたしもYさんの説得力のある雰囲気に圧倒されて、黙り込んでしまいました。
「盛り塩をしなさい。部屋の4隅に置いて、手を合わせてあげようね。わたしが一緒に厨房に行ってあげる」
2人が厨房に向かうと、わたしとFちゃんは一目散で自分たちの部屋に戻りました。
Tちゃんの部屋はわたしたちの隣。
意識的にそのことは話さないようにして、買い物のことや、東京の友達に出す絵葉書をどう書こうかなんて話をしながら、早々に寝ることにしました。
しかし、眠れませんでした。
部屋の隅からずっと、ゲームボーイの音が聞こえてくるのです。
Fちゃんは、当時流行っていたテトリスを持参していました。
でも、こっちに来て2日目にゲームボーイは別の階の男の子に貸していたのです。
2人ともハワイに来てぜんぜんやっていないのだから、音が耳につくはずもありません。
だけど怖くて言い出せませんでした。
気のせいだ、これは気のせいだと思い込もうとしていると、Fちゃんが小声で、
「ねえ、さっきからずーっとテトリスの音が聞こえない…?」
って言ったんです。
「ぎゃ!」
わたしは叫んでFちゃんのベッドに潜り込みました。
わたしのうろたえぶりを見て、Fちゃんは
「やっぱりこの子にも聞こえてるんだ」
って思ったそうです。
シーツをかぶって2人で震えながら朝を迎えました。
Yさんのアドバイス後、帰国まで無事にTちゃんの周りでおかしなことは起こらなくなりました。
でも、きっとあの夜。
わたしたちの部屋にはその男の子が遊びに来ていたんだと思います。
いまでもFちゃんとはあまりその話はしません。
長文ごめんなさい。
黙祷
超電磁ヨーヨー
ポポプラジル
麻宮サキ