出張で金沢に逝った事があったんだ。
夏休み最後の週末で、特急列車のホームは見送り客でイパーイだった。
そしたらリュックサックをしょった小さな男の子と女の子が勢いよく特急に乗り込んでいったんですよ。
その後ろから
「ほら、爺やにバイバイしなさい」
とたしなめる母親。
男の子と女の子はきびすを返して手を振る。
その先にはゾウリを履いた痩せ型の爺ちゃんがただ一人ホームに残されていた。
「それじゃ向こうに着いたら連絡しますんで」
と母親。
爺ちゃんは
「うん。また爺の所に遊びに来るんだぞ」
答えた後突然ポケットからハンケチを取り出し、
「ではマサコさん、孫を・・・孫をよろしくたのみます」
とむせび泣きはじめるんだよ。
でも小さな女の子にはその心情が理解できないんだ。
「ねえ、ママ?爺やが泣いてるよ?爺やはどうして泣いてるの?」
とカン高い声で不思議がってるんだよ。
思わず、ただ立ちすくんで何も答えられなくなる母親。
一瞬時間が止まったかのように静かだった。
そして
「プルルルルルルルル」
と発車の合図。
ドアが閉まり、発進してからも爺ちゃんはいつまでもいつまでも孫の乗った列車に向かって手を振っていた。
なんか駅での別れって絵になる。
俺も思わず目頭が熱くなった。
そのあとで別れが辛くて爺やが飛び込み自殺ですね。
黙祷
ポポブラジル