幼稚園の頃お絵描きの時間に先生が
「大好きなものを描いてね」
といういやに抽象的なテーマをだした。
みんなは、「おかあさん」とか「愛犬」とか「お花」を描いていたが、私は画用紙一杯に茶色の丸を何個も何個も描いた。
先生の
「これ、なあに?」
の問いに
「とりのからあげ!」
と元気に答えた私。
教室内は大爆笑、
「だって、好きなものって言ったやん」
と子供心が傷ついた。
その絵を、返却され家に持って帰る事になり
「お母さんも笑うかなあ、」
と心配になったが、お迎えに来た母に
「好きなもの、から揚げ描いたら先生も皆も笑ってん…」
ここまで話すのが精一杯で大泣きしてしまった。
母は満面の笑みを湛え
「そっかあ!」
とその足ですぐスーパーに行き、鶏肉をいっぱい買って来てその日の夜と、次の日のお弁当にから揚げを入れてくれた。
年子の弟がいたので、「お姉ちゃん」というプレッシャーがあったのと、食が細かったので、「これが好き」とか「これ食べたい」とかあまり言わない子供だったので
母はすごくうれしかったみたい。
父も
「この子は酒飲みになるぞお」
とうれしそうにから揚げをたべていた。
期待を裏切らず酒飲みになり、あてはいつもから揚げ、身長も171センチと大きく元気に育った。
「から揚げの絵」は、いまも大切に実家に保管してある。
おかあさん、ありがとう。
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