近畿地方の大学に行ったキモヲタな俺の弟の話。
3年ほど前、弟は近畿の競艇場で夜間警備のバイトをしていた。
警備と言っても実際に見回るのは午前3~5時までの2時間だけ。
後は寝たりマンガ読んだりオナったり、と好き勝手に出来るらしい。
ただし3時からの見回りのコースには5箇所のタイムスタンプがあり、決められた時刻にタイムカードを差し込まないといけないそうだ。
つまり寝過ごしたり、巡回コースを走って回ったりする不良警備員への対策らしい。
弟がそこの警備員を初めて3ヶ月目、その日も巡回に出かけて順調に見回りをしながらタイムカードも3箇所目に差し掛かった。
「あ~そろそろだな」
弟がイヤだったのは、競艇場のレース水面が見渡せる建物2階の長廊下。
ここにはよく水面に火の玉が浮いているそうだ。
いつものようにアニメソングを口ずさみながらカラ元気を出して廊下を直進。
次のタイムスタンプ定時刻まで20分ある。
ゆっくりと見回りをしなければすぐに到着してしまう。
弟はイヤイヤながら歩調の速度を落とした。
次は職員控え室の前。
ここからもよく話し声が聞こえるが、完璧に無視した。
警備についた当初に聞いた先輩警備員からのアドバイス、
「変な事が起きても絶対に、見えない聞こえないを押し通せ」
というありがたい助言に従い、弟は部屋の前だけ足早に過ぎて、今度は別の練の長廊下に差し掛かった。
「ここの廊下の突き当たりのタイムスタンプまで行けば、後は楽勝だな」
夜勤が終わったら朝から遊びに行くか、などとボケーっと考えていたら、廊下の中間地点にある、TVといくつかのソファーのある場所からゴソゴソ、と音が聞こえた。
ピタッと弟が歩くのを止めると、音もピタッと止んだ。
弟はソロリソロリと懐中電灯でソファーを照らしながら近づいて行くと、 いきなりシャツと半ズボンを着た首の無い子供がソファーの陰から飛び出て来て、刃物のようなモノを振りかざしてこっちに走ってくる。
それを見た弟は悲鳴をあげ、懐中電灯を振り回しながら、もと来た道を走って逃げ出した。
次の日、弟は事務所に事情を話して、交通誘導の警備の方に変えてもらったってさ。
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