地元から遠く離れた所で就職して、過酷な仕事と職場のイジメで鬱になった。
通院治療しながら、家族のお荷物と思われるのが嫌で、家には内緒にしてメールで「元気にしてるよ」って送ってた。
そしたらある日、イジメが酷くてもうどうにも死にたくてたまらなくなった。
病院に行ったら、先生が親に電話を掛けた。
何て言われるだろう。
怒られるだろうか。そう思いながら、受話器を取った。
電話口で母ちゃん、「ずっと気付かなくて、ごめんね」って言った。
俺は、電話を手にしたまま声を上げて泣いた。
次の日には、母ちゃんが実家からやってきた。
「しばらく仕事休んで、母さんと温泉巡りしようよ。ずっと行きたかったんだ」
ふとすると死ぬことばかり考えてしまうくらい酷い状態だったが、母ちゃんがあちこち連れ回してくれて、嫌なことから全部遠ざけてくれた。
一度だけ、真顔で言われた。
「母さん、あんたが死んだら困るな…」
そんな悲しい顔、もう見たくないよ。
ずっと笑っててよ。
親孝行、したいよ。
ありがとう、って何度言っても言い足りないよ。
?
うらやましいな…
優しいお母さんで。
本人の許可なく親に電話はかけないし、緊急入院でもなければ通常投薬だけで帰され電話をかけるような奇特な医師はいない。