高校1年の春だった。
まだクラスの顔ぶれがどんなもんかわかってない、そう、入学式から確か5日目あたりだったと思う。
俺のななめ右に、ひょろひょろのいかにもガリ勉君みたいなタイプの男が座っていた。
うしろから見ると時代遅れの角刈りの青さがやけにまぶしい兄ちゃんだ。
俺はその時初めてそいつの事を意識したような気がする。
で、その日の午後・・・奴は早速クラスのちょっとヤンキー連中に興味を持たれていた。
俺のななめ前で奴は4人の男に囲まれ、なんか質問攻めにあっている。
「その眼鏡何だよオイ」
とか
「おまえ童●か?」
とか(高一の人間に●貞か?はないだろうにと思ったが)。
笑い声はさらに高まり、ついに手が出始めた。
4人のうち一番身体がでかい、ヤンキーまるだしの奴が角刈りをさわさわ触っている。
というより、パンパンとたたき始めたりなんかしている。
「うわ~っ、いじめられてる・・・」
と俺が、ちょっと引いたその時だった。
角刈り君の左腕がヤンキーの腕をひょいと取り、くるっとねじまげてひざまずかせ、
「やめんかい!」
と言う声とともに前へ倒した。
ヤンキーは机に頭をぶつけそうになった(その間わずか1秒ほど)。
他の3人は身じろいだ。
空気が一瞬で凍りつく。
角刈りは他の3人をじろりと見ると
「おまえらまだ何か質問あるんか?」
とドスの効いた声を発した。
3人は気まずそうに
「い、いや・・・」
と、うしろの方へ・・・。
と、倒されたヤンキーが立ち上がって、角刈りに殴りかかった・・・が、今度もまた角刈りはその腕を簡単に取って、身体を横方向に一回転。
ヤンキーは、がらがらがらっと机に突進して、アゴをしこたま打ってしまったのだった。
とにかく鮮やかすぎて声も出なかった。
後で知ったことだが、ひょろひょろの角刈り君は合気道をやっていたという。
その後も彼は別のヤンキーに絡まれたりしたが、常に簡単に蹴散らしていた。
そして、数ヵ月後には影の番長みたいな存在になっていたw。
彼は非常に正義感が強く、その後も彼が目を光らせているので彼のクラスではいじめが無かったらしい。
俺はそんなに仲良くしなかったけど、ひそかに彼に憧れていた。
あんな角刈りなら俺はなってみたい。
かっこいい!
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