母方の祖母は私が3歳の時に亡くなったが、その死の直前の出来事だった。
ある夜、叔母(母の妹)が病室で付き添っていたら、祖母が突然立ち上がって部屋を出て行ってしまった。
祖母は末期がんで立つ事すらままならなかったのに、驚くほどしっかりした足取りだったそうだ。
びっくりした叔母が追い掛けると、かなり歩いた廊下の突き当たりで祖母は立ち止まっていた。
追いついた叔母に
「今ね、黒いマントを着た人が来て、付いてきなさいと言われたのよ」
と祖母は話した。
その後、祖母はもう歩くことはなく、間も無くして亡くなった。
それから十数年後、私が母とテレビで心霊番組を見ていたら、祖母の死の直前にそういう不思議な事があったと母が語ってくれた。
「黒いマントの人って、きっと死神よね。母さんは無事に成仏できたのかしら」
と母が言うので、どこかの漫画の台詞の思いっ切り受け売りだけど、 母を慰めようと言ってあげた。
「死神が鎌を持っているのは、
あれは偉い神様に仕えている農夫だからだよ。
死神はあの鎌で魂を刈り取るんだよ。
死神だって神様なんだし、
お祖母ちゃんは神様が迎えに来てくれたんだから、
まっとうに生きてちゃんと天国に行けた証拠だよ」
私がそう言うと母は急に涙ぐんで、良かった良かったと繰り返した。
真っ当に生きた者が逝くのは地獄なんですがね えぇ 。
踏切