高校の頃の話。
ウチの高校は3階建てで、3年生が3階、2年生が2階、1年生が1階に教室があった。
ある初夏の日、最上階の軒下(3年生教室の窓のすぐ外)にどこからきたのかスズメバチが巣を作っていた。
気づいたときには、巣は結構大きくなっていて、近くの教室は窓を開けることが出来なくなってしまった。
授業中もハチがコツコツと窓ガラスに当たる音が聞こえる程、ハチの数も増えていた。
そんなとき、正義感に燃える当時の生徒会長が生徒の安全を守るべく、巣の破壊に乗り出した。
うちの高校は学業もスポーツも中途半端な田舎の学校で、不良とマジメな奴も中途半端に混在していた。
生徒会活動なんかやるのは、どちらかというと空気の読めない、いわゆる「イタいマジメ君」が代々続いており、
本当に頭の切れる能力の高い奴は受験や部活等、自分のやりたい事に没頭してる学校だった。
そんなんだから生徒会長に立候補するのは、きまってどこかがズレてるマジメ君だった。
巣の破壊を試みた生徒会長は、その風貌や日常の言動から、下級生からも「のび太君」と呼ばれるような人間だった。
その「のび太君」は物事を深く考えるのが苦手な性質で、生徒総会でも散々な評価をうけていた。
そこで今回の巣の破壊で、自分の株を上げようとしていたんだと思う。
あせってたんだろうな。
休み時間、のび太君は教室にいる生徒にアナウンスもせず窓を半開し、教室のほうきの柄で巣をつっつき落とそうとした。
多分、すぐに巣は落ちるものだと、のび太は思ってたんだろう。
予想に反し巣は弾力があり、本体は落ちず部分的にボロボロ崩れるだけだった。
当然ハチは興奮して外に出てきて、わずかに開いた窓から教室に侵入、突然のハチの襲来に、なんの構えもない生徒数名が刺されてしまった。
のび太はそれにかまうことも無く、なおも執拗に巣をつっつき続け、ついに巣を落下させるに至った。
多分、彼はそこで達成感を感じたと思う。
当然、巣は1年生の教室の外に落下。
窓を開放していた教室に多くのスズメバチが侵入し、ここでも多数の生徒が被害者となった。
1年生の中には頭を何箇所も刺された子もいて、その後救急車で運ばれたけど、かなりヤバイ状況だったらしい。
俺は2年でそのとき教室で着替えしてたんだけど校舎の上から下から悲鳴や大声が聞こえてきて、校舎中大騒ぎになって、次の体育も中止になった。
当事者であるのび太は刺されなかったって後で聞いたけど、その後各学年のヤンキー&ケバGAL連中から定期的に報復を受けていたらしく、学校に来なくなった。
その年の正月休みに、学校の武道館の壁にこのエピソードの一部始終を忠実に示したマンガが落書きされ、生徒の間で話題を呼んだ(ドラえもん風)。
ケータイも写メもない時代だったから何も残って無いけど、多分、サッカー部のノトヤの仕業だと思ってる。
同窓会では、未だにその話題が出ます。
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