実家の婆ちゃん。
いつも上品に着物を着こなして、仕草もお上品。
俺が高校生の頃、今となっては珍しい押し売りがきた。
しつこいので婆ちゃんが毅然と断ったら、その押し売りが
「このクソババァ!」
とキレて、ナイフを取り出した。
そしたら婆ちゃん、奥の間に飾ってあった薙刀を持ち出し、手際よくタスキを掛けると、すばやい動きで押し売りの手からナイフをはたき落とし、のど元に切っ先を突きつけて、
「とっとと出てお行きなさい!」
と腹の底に響くような声で怒鳴った。
少ししたらその押し売りが警官を連れてきた。
「薙刀で殺されかけた」
とか言ったらしい。
婆ちゃんが毅然といきさつを説明しているうち、所轄の偉い人が駆けつけて、婆ちゃんに丁寧に謝罪して、押し売りを連れて
引き取っていった。
後で母ちゃんに聞いたら、婆ちゃんは昔、薙刀の師範代だったとのこと。
また、若い頃から防犯活動やら青少年の育成やら、いろいろと警察にも協力していて、当時の署長とも顔見知りだったとのこと。
もう惚けちゃったけど、あのときは格好よかったです。
お婆さんかっけえ……