私の高校は、都内の外れにあって、かなり田舎。
行く途中は茶畑を通らなくてはならない。
人があまり通らないその茶畑は、変質者が出ることで有名だった。
変質者は、雨の日に必ず現れた。
傘で顔を隠し自転車に乗っていて、大人しそうな子には襲いかかり、ちょっと派手めな子には、少し距離をとり、黙って後を着いてくる。
学校側もかなり警戒をしていて、警察にも連絡して見回り強化してもらったのだが、それでも変質者は現れていた。
私は後者のタイプで、一年間で5度ほど被害にあっていた。
最初はかなりの恐怖だったが、ただ着いてくるだけだし、携帯を取り出すと逃げていくことも分かっていたので5度目になる頃にはもう慣れていた。
そして6度目。
雨の日に茶畑を歩いていると、いつものように変質者は現れた。
私も、いつものように携帯を取り出し、友達に電話。
いい加減、変質者に腹が立っていたので、変質者にも聞こえるような大きな声で電話口の友達に、
「また変態でたんだけど。うざいんだよねー」
的なことを言った。
すると、変質者は怒ったのか、傘で私の背中をバシっと叩き、自転車で私を追い越し、逃げていった。
一瞬、刺されたかと思ってビビっていたが、逃げていく変質者を見てると怒りが湧き上がる。
「絶対殴り返す!」
と思い、ダッシュで変質者を追いかける。
自転車には追いつけないかなぁとも思ったのだが、茶畑の出口でウロウロする変質者を発見。
茶畑の出口は車通りの多い道路。なかなか車が途切れず、逃げるに逃げられなかった様子。
全速力で走っていき、変質者の乗っている自転車を蹴り倒した。
「やった!やり返してやった!」
と思い、変質者を見ると、なんと子供。
中学生だった。
しかも、イジメにあって不登校になってヒキコモって2chやってそうな、細っちい豆モヤシのような、ブサイクな中学生。
心底私にビビッているようだった。
私は強いものには逆らわず、弱いものには強く出る、といった典型的な自己中なので、厨房だと分かった瞬間にブチギレ。
今までの怒り、被害にあった私の高校の人たちの恨み、走ったおかげで疲れた怒り、雨にぬれて寒いイライラ、全てをそいつにぶつけた。
高校のカバン(当時受験生で参考書がイッパイ。肩こりで整形外科に通うほど重い)で出来るだけそいつの顔めがけてブン回した。
「厨房がサカってんじゃねえ」「変態」「死ね」「生きてる価値ない」「ブサイクすぎてキモイ」等、言えることはなんでも言った気がする。
たぶん言葉になってなかったと思う。
私も体系は細いほうで、力は腕相撲で勝ったことがないくらい弱いのだけど、そいつはさらに弱かった。
私に圧倒されたからかもしれないけど。
しばらく殴り続けてから、片手でそいつの服を掴んで、携帯から高校に連絡。
厨房は「すみませんすみません」と言って逃げようとしていたが、火事場のバカ力なのか、私の掴む力のほうが強く、逃げられない。
少し経つと先生方がやってきて、取り押さえた。
その場で警察に連絡、私は事情聴取で一緒に警察署へ。
一応「一番重い処分にしてください」と言ったが、被害にあった子たちがあまり何も言わなかったためか、保護観察処分になったらしい。
悔しい。
今思い返すと、相手が刃物持ってなくて良かったとしみじみ思う。
気持ちはわかる。だけど やり過ぎ!
うん、気持ちは解るけど、完全にその子の将来潰れた感じ