親父と二人でバスに乗って出かけたときのこと
乗るときにどうやら、前に並んでいた数人の客も小銭がなかったらしく両替をしながらバスに乗り込んでいた(料金は先払い)
それで俺たちが乗るときに、運転手がボソッと
「小銭くらい用意しとけよ」
ってつぶやいた。
いやな運転手だなと思いながらも暑い日だったので、中の涼しさで怒りも忘れることができた。
乗客の中には、子供も数人いて休日で出かけるのか楽しそうに話をしていた。
親は子供たちを騒がしくしないようにしっかりと見ていたし、実際そんなに騒がしくなかった。
それでも運転手は気に入らないらしく
「子供をちゃんと見ていてください、ほかのお客の迷惑です」
とアナウンスを流した。子供たちは騒がしくしているつもりはなかった
ようなので、変わらず楽しそうに話を続けていた
「うるさいっていってるんだ、子供のしつけくらいちゃんとしろ」
と、マイクでどなりその声は車内に響き渡った
子供たちはびっくりしてしまい、車内では誰一人話すらしなくなった
信号で止まると、隣に座ってた親父が立ち上がり運転手を怒鳴りつけた
「何だお前のその態度は、両替はあんたの業務でもあるし、子供が乗れば多少騒がしくなるのは当然だろう。それに子供たちも周りに迷惑かけるほど騒がしくはなかった。お前みたいに短気なやつが運転するバスには危なくてこれ以上乗ってられない。今すぐここでおろせ、それとお前の名前はなんていうんだ」
といってその場で俺と親父はバスを降りて暑い中、目的地へと向かった
家に帰ると親父はバス会社に文句を言おうと電話した
すると、あの時乗っていた人たちの中にもクレームの電話を入れた人がいたらしく
「途中で降りた方ですか、このたびは大変迷惑をおかけしました。直接お詫びしたいので、住所とお名前を教えてください。」
といわれ、電話をした40分後くらいにそのときの運転手と上司の人が家に来た
運転手は納得いかないといったような態度で
「申し訳ありませんでした。今日はとても暑かったのでいらいらしていたのかもしれません」
と形だけの謝罪に親父がまた怒り出し、
「あんたは涼しい車内にずっといただろうが、暑かったのはこっちだろ。何いってるんだ」
その言葉を聞いて上司の人も
「どうして君はその場しのぎの言い訳をするんだ。さっきの反省は嘘だったのか。」
と上司にも怒鳴られ、うちの玄関先で30分くらい親父と上司から怒られ最後には半泣き状態になっていた。
最後にお詫びといってバスの乗車券を受け取ってくださいと言ってきたが、乗車料金だけを返してもらうということで話が付いた。
「親父も、十分短気だよ」
と俺が言うと、
「あそこで怒らないやつは、お人よしを通り越して臆病者だろ」
と玄関先で蚊に食われたところにキンカンを塗りながらつぶやいた
地獄に相応しい御父上ですね。