東京出張時泊まった新宿の某ビジネスホテルでの事。
夜中書類を整理していると、なにやらズルズル引きずるような音。
他の客かと思い、気にせず仕事を続ける。
しかしよくよく聞いて見ると、その音はローカを端から端へ、ただひたすら往復しているだけの様子。
何事かと思い、チェーンをしたまま少しドアを開ける。
すると、年齢は90近いのではないだろうか?
真っ赤なジュウニヒトエ(?)を纏ったクシャクシャの老婆がスソをズルズル引きずりながら、まさに私の部屋の前を通り過ぎるところだった。
私は「!?」と思わず、ひっくり返りそうになったが、チェーンに守られている心強さで、そのまま老婆を見続けた。
老婆はというと、私の事など全く意に関せずといった様子で、そのままズルズルとローカを端まで歩き続けた。
と、突然私を振り返り、にこやかに微笑ながら私にうなずいたかと思うと、そのまま非常口のドアを「開けず」に外へズルズル出ていった。
私は腰を抜かさんばかりにびっくりして、ドアから離れ鍵をかけ、テレビをつけたまま部屋で震えていた。
しかし、私にはなぜか老婆の微笑みとうなずきが、
「ウン・・・いいのよ」
という照れによる誤魔化しにしか思えなかった。
私は心のなかで、「まあ・・・いいですけど」と呟いた。
ガンメン
↑キモメン
照れ屋の老婆霊