先輩から聞いた話
部活の合宿で肝試しをすることになった。
真夜中の海岸を1人で歩いて戻ってくるコース。
当然街灯もなく真っ暗闇なので懐中電灯で足元を照らす必要があったのだが、その懐中電灯にはたまたまラジオが付いていた。
怖がりの先輩はそのラジオのスイッチをいれて、音楽を聴きながら気を紛らわせていた。
しばらく歩いていると、音楽が止み、ニュースが始まった。
なにやらキャスターがあわてた様子で早口で話している。
「アメリカ・・・・」
「ソ連・・・」
「国連・・・」
「日本政府は・・・」
暗闇の中で緊張状態にあった先輩はニュースの内容をそれほど真剣に聞いてなかった。
しかし、スピーカーから聞こえてくるキャスターの様子に異常を感じ、その場に立ち止まってラジオに耳を傾けた。
「本日、日本時間午後9時ごろ、アメリカとソ連が全面戦争に突入した模様です。数発の核爆発がアメリカ、ソ連の両国で確認されています。・・・・・」
先輩は耳を疑った。
「うそだろ!」
肝試しどころではないので、ダッシュでもと来た道を戻って仲間のもとに戻っていった。
みんなの所にもどると大声で、
「ニュースを聞いてくれ!」
とラジオ付きの懐中電灯を差し出した。
しかし、そこから聞こえるのは、始めに聞いていた音楽番組であった。
先輩は確かにそのニュースを聞いたと言ってました。
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