20歳の誕生日をもうすぐ迎える。
最近はセンチメンタルな気分になって昔の写真を引っ張り出したりしている。
見てるうちに昔住んでいた家のことがとても気になった。
近隣の市に引っ越したにも関わらず、一回も訪れていない。
今は誰が住んでいるんだろう?今もあるのだろうか?
むしょうに知りたくなった。
朝、大学に行くために家を出たのに気付いたら反対方向の電車に乗っていた。
住んでいたのは3歳までだからほとんど覚えていない。
でもあそこに住んでいたことが確実にその後の人生に影響している。
三つ子の魂・・っていうやつだろうか。
駅の南口を出て住所と写真を頼りに進んでいく。
海のニオイが強くなってきた。何人ものサーファーの人とすれ違う。
写真で見覚えのある八百屋さんや魚屋さん。
ちょっと皺の増えたおじさんの変わらない笑顔がそこにあった。
私のことなんて知ってるはずがない。分かってるけど、なんだか嬉しかった。
住宅街に入った。住所も近くなってきている。
この辺のハズ・・・・ふと視界に住所のプレートが目に入った。
あった、ここだ!
そう思った瞬間、次に飛び込んできたのは高層マンションだった。
見るからに新しい。まだ所々工事中という感じだった。
考えていた範囲ではあった。元々社宅であったし、
私たちが出た後は景気に合わせていろんな会社に渡っていったという噂は聞いていた。
最近の不景気ぶりと高層マンションブームを考えると当然のことかもしれない。
「すいません。このマンションっていつ頃建ったんですか?」
思わず通りかかった近所の住人に聞いてしまった。
入居が始まったのは今年の春という答えだった。
遅かった、ほんの一足遅かった。
悔しい。
悲しい。
空しい。
なんともいえない感情が渦巻いた。
まったく変わってしまった風景から面影を必死に探す。
あのたくさんの写真はどこから撮ったものなのかを必死に探す。
なかった。なんにもなかった。
マンションの影響か周りは道路を含め全て整備されていた。
帰りがけに一番の遊び場だった海で、その時一番好きだったアイスをコンビニで買って食べた。
苦かった。
コメントを残す