わたしの父はいわゆる生活破綻者でたくさんの借金を作り、母を夜中から晩まで働かせて、雀荘とパチ屋に入り浸る生活。
そのせいで母もおかしくなり、弟たちにはヒスを起こして虐待まがいのハードな躾を繰り返し、わたしには泣きながら毎日父への恨み言を聞かせてきた。
「あの人はあんたら(子供)に興味がない」
「あんたらを可愛と思ってない。自分のことしか考えてない」
幼かったわたしはそれを聞き、ショックで愕然としたものだ。
父は確かにいい加減だったが、わたしにとっては優しくて大好きなお父さんだったから。
裏切られた。それからわたしは、反動のように父を恨むようになった。
今、両親は離婚して6年になる。父にも何年も会っていない。
もう父を恨まない。そう思えるようになったのはごく最近だ。
父はわたしたちを養う力がなかったし、家族を持つ資格もなかった。
だが子供に母の悪口を言ったことは決してなかった。
ヒスを起こして泣くまでわたしを殴る母から守ってくれたのも父だった。
バカと思われるかもしれないが、わたしは救われていたと思う。
いまだにぼーっと思い起こすことがある。
2歳か3歳の頃。
両親の間にわたしが入って、手をつないでもらって、どこかへ出かけるために、駐車場への階段を下りている。
わたしはまだ軽くて、両親の手にぶらさがったまま足を浮かせてる。
両親の顔を見上げたら、右も左も笑顔で、わたしも嬉しくて笑顔・・・
きらきらと陽光が眩しくてすぐに顔を戻す。
あの頃は幸せだった。幸せだった。
幸せな思い出なのに、今でも涙が止まらない。
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