訳あって引き取って育ててたかわいげ皆無なクソガキがけっこーいい大学に受かった。
正月に親戚が集まったときあんまり性格がよくない俺の嫌いなおばちゃんに
「私たちのところで引き取ってたらもっといいところに行けたかもね」
ってそのそいつが言われてて、
(そのおばちゃんはこいつを誰が引き取るかっていう親族会議になったとき「私は絶対嫌」って本人の前で言いやがった。一番経済的な余裕があるのに!それで俺が勢いで「じゃー俺育てます」って言っちゃったんだけど)
俺はいらいらしつつもああそうなのかもな、俺がもっといい会社に就職したりはやく出世したりしてれば、こいつにもっといい環境を与えてやれただろうし塾だって通わせてあげれたのにな、よく考えれば俺があのときこいつを引き取るなんて言わなければ他のもっと金持ってる誰かがこいつを引き取っただろうし、あー俺もしかして悪いことしちゃったのかな、って思ってたらそのクソガキ、
「今の自分があるのは○○(俺の名前)さんのおかげだし、俺がこんなとこに受かれたのも○○さんのおかげです」
って。言ったんだよ。
おばちゃん沈黙。
そいつ普段俺の名前にさんなんかつけないんだ。
常にえっらそーに呼び捨てなんだ。
ほんっとに死ぬほど嬉しかった。
今まで生きてきた中で一番嬉しかった。
帰りの車で、俺すっごい浮かれてて、そのガキに
「ありがと」
って言ったら、奴は俺がそのとき襖一枚向こうにいたのを知らなかったらしく、怪訝な表情をして、そんでしばらくしてからマフラーに顔埋めてそっぽむいた。
どうやら照れてるらしかった。
すっげえかわいかった。
俺、こいつ引き取ってからこの瞬間までこいつをかわいいって思ったことなかった。
クソ生意気で補導はされるわ女連れ込むわ俺の大っ嫌いな煙草をわざわざ俺の寝室で吸うわもうほんっとにどーしよーもないガキだったけど、もうほんとかわいかった。
実際に子供いたらこんな感じなのかなって思った。
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