両親を事故で亡くした俺には、9歳離れた姉貴がいた。
ガキの頃、肥満気味で両親がいなくて苛められてた俺をいつも助けてくれた。
優しくて、強くて、俺の自慢の姉貴だった。
秋になると金木犀の花を部屋に飾った。
お姉ちゃんが一番好きな花なんだよと笑って。
高校にも行かず、朝から夜まで働いて俺を養ってくれた。
そんな姉貴が、死んだ。
事故だった。
結婚が決まって、やっと幸せになれる日を目の前にして、姉貴は逝った。
享年27歳。
俺は兄貴になるはずだった人に後見人を務めてもらい、小さなアパートに部屋を借りて就職をした。
5年経って、俺は職場で出会った彼女と結婚を決めた。
式の前日、姉貴が夢に出てきた。
姉貴は俺にごめんなさいと謝った。
大学まで行かせてあげたかったと。
俺は高校出たら働いて姉貴に楽させてやりたかったよ。
姉貴は私の分まで幸せになりなさいねと泣きながら笑って言った。
姉貴の式の日に、今まで有り難うって言って渡すはずだった金木犀の苗木は、俺の家の庭に植えた。
今年も金木犀の季節がやってくる。
俺はきっとまた、姉貴がいた頃を思い出して泣く。
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