これは私の父の体験談です。
父は高校の時分、登山部に所属していたそうです。
高校二年の冬、友達と二人で雪山登山をする事になりました。
その日は昼間の晴天と打って変わって、夕方近くになりますと、とんでもなく吹雪き、ほぼ視界はゼロになってしまったそうです。
引き返そうにも前が見えず不可能と判断した二人は、もう暫く頑張って登り続ければ、
その先に山小屋がある事を知っていたそうで、とにかくその山小屋までいそいだそうです。
その途中、吹雪の中スキー客二人が、上の方から滑ってくるのが見えたそうです。
そのスキー客は、父のすぐ横を滑って麓の方に行ってしまいました。
父とその友人は暫く歩いているうちに、ある事がとても気になったそうです。
「こんな吹雪の中、よくスキーをしていられるな、ましてや視界はほとんどきかない・・・」
実は、そんな事よりもっと気になる事があったそうです。
彼等が滑って行ったあとに、スキーでできるはずの轍(わだち)がなかったということです。
それと、ほんの1M先も見えないような中、上からスキー客の滑ってくるのがどうして僕等に見えたのだろうか・・・
父と友人は山小屋で一晩過ごし、翌朝下山したそうです。
麓では捜索隊が騒がしく人を探していました。
はじめは自分達を探す為の捜索隊かと思いとても焦ったそうです。
しかし、話を聞くと、三日前から戻らない男女二人連れのスキー客を探しに行く為に編成された隊だということがわかりました。
父は、昨日の出来事を話したそうです。急遽、いま来た道を逆戻り、隊をその場所に案内しました。
昨日の吹雪の中では見えなかったそうですが、スキー客とすれ違ったと思われる場所のすぐ横には崖がありました。
その崖の下で二人の遺体が発見されたという事です。
コメントを残す