私がまだ小一の頃。
母さんと父さんはあんまり仲が良くなくって、どちらかというと母に良くして貰ってた私は、父のことがあまり好きではなかった。
そんなある日、学校に行ったとき上靴を忘れてしまった。
仕方ない、靴下で一日過ごそうと思っていたその時、父が上靴を持ってきてくれた。
父は背がとても高いが、ルックスはアンガールズの田中に似てて、はっきりいってかっこいいとはとても言えない父。
クラスメイトが私の机に集まっていたこともあり、恥ずかしさとか色々な感情で思わず、「出て行ってよ!!お父さんが何で上靴もって来たの!!」と強く言ってしまった。
父は、何も言わずに上靴を置いて、教室を出て行った。
家に帰ると、仕事から帰った母親がいた。
「○○(名前)、今日父さんに何か言ったの?」
すぐに、あの上靴のことだと分かった。
母に聞いた話によると、父は教室を出てから家に帰るまで、ずっとわんわん泣いていたらしい。
その日は出張の日で、東京に行ってしまったが、母には、「○○を責めないでほしい。あの子は何も悪くない。」と、泣きながら飛行場に行ったそうだ。
私も泣いた。
初めて、本気で父さんに申し訳ないと子供心に思った。
いつも、早く仕事に行って遅くに帰ってくる父さん。
教育なんてまるで興味ないのに、突然怒り出す父さん。
熱を出したとき、一番心配していた父さん。
不器用だけど、笑った顔は最高の父さん。
いつもお疲れ様って、何でずっと言えなかったんだろう。
その日の夜、父さんに電話を掛けた。
「わざわざ電話掛けてくれてありがとな」って泣きながら言ってきた。
私は泣きすぎてボロボロで、声にならない声で
「お疲れ様。仕事、頑張ってね。」
電話を切った後でも、私は罪悪感でずっと泣いていた。
父は二日後に帰ってきた。
私の好きな東京バナナをおみやげに買ってきてくれて。
東京バナナって、甘くてとってもおいしい。
でも、私が食べた東京バナナは、とってもしょっぱかった。
ありがとう、父さん。
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