母とワルガキ5人組の奇妙な付き合いが始まったのは6年前の話し。
その頃私は離婚をし、息子と二人母が一人で暮らす実家へ帰ってきていました。
夜の7時を過ぎた頃、家のチャイムが鳴り私が玄関を開けると、気崩した制服に派手な髪型制服なのにネックレスをつけたドラマに出てきそうな不良!!って感じの五人組が立っていました。
話を聞くと他校の生徒と喧嘩をしたらしく血や砂で汚れた顔を洗いたいので庭にある水道をかりたいんだとか・・・・・・
私は戸惑いましたが母が奥から出てきて「汚い格好して~男前が台無しや!家上がって顔洗い!!」と少年たちに声をかけました。
少年たちもえ?と言う感じの戸惑った顔をしながらもお邪魔します!と言いながら家に上がって顔を洗いました。
母が少年たちを睨みながら
「お前ら!喧嘩は勝ったんか!?」
と聞くと少年たちは
「あったり前やん!負けてたらもっと暗い顔しとるよ!」
と答え、母はさらに睨みながら
「相手も五人やったんか!?年下とちゃうやろな?」
と聞くと
「五人どころか七人やで!!しかも三年生!」
そう聞くと母はにっこり笑いながら
「腹減ってるやろ!カレー食べていき!」と言いました。
それを聞いて驚いてる私。
しかし私の後ろに隠れていた息子を見つけ少年の一人が息子に近づき目線が合うようにしゃがんで
「ごめんな騒がして」
と言ったのを見て、私はなぜかその少年たちのことをすぐに受け入れることができ、遠慮して帰ろうとする少年達を引き止めてほぼ無理矢理カレーを食べさせました。
少年達が帰ったあとなぜあんなことを言ったのか母に聞くと
「水道使うのにわざわざチャイムならして一言言うか?あんな所にある水道勝手に使っても気づかんはずやのに!お前まさかあの子らが悪い子に見えたんか?見た目で人を判断するな!カレーはたかが水道使うのに一言言えたご褒美や!」と笑いながら言われました。
次の日その少年達が我が家を訪れお礼にとケーキを持ってきてくれました。
なぜか私もその子たちに親しみを持ち、「上がり!お茶入れたろ!」と自然と彼らを受け入れるようになりました。
祖母はその子たちを孫のように可愛がりました。
息子の面倒もよく見てくれてよく遊んでくれました。
私にも荷物持ちで買い物に付き合ってくれたり力仕事をやってくれたり。
ほぼ毎日五人組の誰かが我が家に遊びにくるようになりました。
それから半年がたった頃、私は仕事の都合、実家から車で20分ほど離れた町で暮らすようになりました。
母からは毎日電話であのガキが来るからご飯作るのが大変!とか今日は誰と誰がきて買い物に行ってくれたとか明るく話す母の話を聞いて安心していました。
それから二年ほどたったある日、一人の子から電話がかかってきました。
「ばぁちゃんの様子がおかしい」
私はすぐに実家へ向かいました。
そこにはぐったりと寝込む母の姿が。
すぐに病院へ連れていくと薬の飲み過ぎだとか。
母は薬を飲んだか覚えておらず何錠もの薬を飲んでいました。
母はボケはじめていたのです。
私は実家で息子と留守番してくれていた彼にそのことを伝えるべく足早に帰りました。
実家に着くと一人しか来ていなかったはずなのに母を心配して五人全員揃って待っていました
「ばあちゃんどやった?食いすぎ?」など冗談を言っている彼らにすべてを伝えました。
そして母が彼らに迷惑をかけるかもしれないのでもう来ないでほしいと言うことも。
すると全員が暗い顔一つせず、「じゃあなおさら来るよ!誰かが世話したらんとばあちゃん困るやろ!おばちゃんだって仕事あって大変やねんから協力するばあちゃんにいろいろしてもらったんやから俺らからも恩返ししたいねん!」と言ってくれました。
それからは毎日かかさず交代で母の介護をしにみんな来てくれました。
その二年後母は他界しました。
いま思えば母はどんなに症状が進行しても彼らの名前と顔だけはわすれませんでした。
彼らが高校の入学式の後に来てくれてみんなで撮った写真。
母の日に私にくれたあんたは【俺らのもうひとりのおかん!!】と汚い字で書いてプレゼントしてくれた色紙。
息子が虐められたときに喧嘩を教えるとはりきりすぎて穴を開けてしまった襖。
次の日喧嘩をしてボロボロになって帰ってきた息子を囲っての喧嘩初勝利記念の写真。
みんな我が家の家宝です。
彼らは誰も大学にいかず今は立派な社会人。
母が口癖のように「大学なんざ金出して学校の名前買いにいくようなもんよ!社会人として成功したいならはよ社会に出ろ!勉強できるのと仕事できるのはまったく違うからな」と言っていたからでしょうか。
一人はなんと警察官として日々頑張っています。
あんな心の優しい本当の強さを知った子が警察官だなんてとてもぴったりだと私は思います。
彼らも社会人になり二年目。
昔みたいに毎日顔を出してくれないのが寂しいようなほっとするような。
けどいまだに母の命日と息子の誕生日とお盆 正月には五人揃って顔を出してくれるんですよ。
はやくお盆休みにならないかな。
みんな元気に「ただいまーっ」て帰ってきてほしいものです。
『ゆりか(年齢42歳・♀)』さんからの投稿です。
ありがとうございます。
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