小学六年生の頃の話だ。
親戚夫婦が遠方で急用ができたとかで、子供を預けに来た。
ちょうど土曜日で、両親も夕方まで出掛ける予定があり、僕がいとこ達のお守り&留守番をすることになった。
いとこは七歳男の子と妹五歳。しきりに遊ぼうとねだってくる。
仕方ないので妹の要望を聞いて、かくれんぼをすることにした。
いとこ達は隠れる側で、僕が五十数えて探すことになった。
男の子は押入れに隠れていたのをすぐに見つけ出したのだが、妹の方はどこに隠れているのか、なかなか見つからない。
そんで、僕は「もういいかーい」と声をかけながら探すことにした。
やっぱり子供だ。「もういーよ」と返事してくる。
どうもベットの下に身を潜めているらしい。
僕は音を立てずにそこを覗き込むのだが、姿はない。
また声をかけると、笑いを押し殺した声で返してくる。
やっぱり押入れか?
しかしそこにもいない。
いとこも一緒に探したのだが、見つけ出せずにいた。
僕は少し不安になって「降参。もう出ておいでよ」と声を上げた。
妹は風呂場のドアを開けて、にこにこしながら現れた。(さっき探したけどな)
どこに隠れてたのか聞くが、秘密だと言って教えてくれない。
その後はゲームをして過ごしたが、やっぱりずっと頭にひっかかってた。
夜になっていとこの父親が迎えに来て、二人は帰っていった。
僕も寝る時間になり布団に入った。
どうしても昼間のカクレンボのことを考えてしまう。
そのうちうとうとし始めた頃、暗くした部屋の中から声がした。
「 も う い い か - い 」
はっ?驚いて目を覚ますと再び声が。
「 も う い い か - い 」
微かに、それでも確実に、その声は聞こえた。
僕は思わず布団の中にもぐりこんだ。
それはあの五歳になる女の子の声じゃない。
もっと年配の、おそらく大人の女性の声だ。
「 も う い い か - い 」
だんだん近づいてきている。
体は震え、完全にパニック状態だった。
それでも、返事は二つしかないことは分かっている。
絶対に「もういーよ」、とは言えない。
「まーだだよー」僕は蚊の鳴くような声で呟いた。
「 も い い か - い 」
おそらく声の主は布団のすぐ近くまで来ていた。
(ああ、もう見つかる)そう感じた瞬間だった。
僕が頭から被っていた布団が、勢い良く捲り上げられた。
目を見開いて悲鳴を上げると、そこには誰もいなかった。
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