去年のゴールデンウィーク前のことでした。
東京の大学に通い、一人暮らしをしている息子から電話がかかってきたんです。
たまに連絡はよこすものの、サークル活動やアルバイトに忙しくて盆にも正月にも実家に帰ってこない息子だったのですが、暇だから久しぶりに実家に帰りたいと。
しかし早目に就寝しており、その電話で起こされたため不機嫌だった母親の私は、思わず
「何でこんな時間に電話してくるの。忙しいから帰ってこなくていいよ」と言ってしまいました。
息子は「あーそう」と言って電話を切ってしまいました。
起きた後、せっかく息子が帰ってきたいと言うのに申し訳ないな、謝ろうかなと思いましたが、なかなか電話をかけられずにいました。
その時、まさかあの電話が息子との最後の会話になろうとは思いもよらなかったのです。
そして電話の件も忘れかけた5月4日の夕方、警察署からの電話で事故のことを知りました。
原付でアルバイト先に向かう途中、トラックと衝突し車輪に巻き込まれたそうです。
私は夫、娘とともに息子が運ばれた病院に駆けつけましたが、息子は、すでに息を引き取った後でした…。
私は頭がパニック状態で、涙も止まらず、声が枯れるまで息子の名を叫び続けました。
そして息子の葬儀・通夜も終わり、私も少しは落ち着いてきた5月13日のことでした。
私あてに、ひとつの細長い箱が宅配便で送られてきました。
なんと、送り主の欄は息子の名前が、息子の字で、書いてあったのです。
箱を開けると、「お母さん、ありがとう」のメッセージとともに、たくさんの、色とりどりのカーネーションの花束が入っていました。
事故に遭う前の息子が、母の日に合わせて送ってくれたものです。
今まで、母の日に何かプレゼントしてくれたこともないのに、大学に入り、アルバイトを始めたので、送ってくれたのでしょう。
私は、その天国の息子からの贈り物を抱えて、夫とともに、何時間も何時間も泣きました。
あのゴールデンウィーク前の電話、どれだけ悔やんだことでしょう。
あの時、「帰ってらっしゃい」と、この一言を言っていさえいれば、息子はこの世にいたのかもしれないと思うと、自分が恨めしくて仕方ありません…。
息子の一周忌が過ぎ、今年もまた、母の日がやってきます。
息子からの宅配便は、もう届くこともありませんでしょうが…。
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