これは学生の頃のバイト先の先輩(♀)の実話である。
彼女の友人には、当時4歳になる娘がいたのだが、モノ心つき始めた頃から妙な事を言い始めたという。
どうやら、娘には、普通の人にはみえない「誰か」がみえるらしい...。
ある日を境に、娘は台所(キッチン)へ行きたがらなくなった。
その家はキッチンが家の一番奥にある構造をしているので、別にキッチンを通らないとどこかの部屋に行けない訳ではないのだが、あまりに娘のキッチンへの拒否の仕方が尋常ではないので、ある日、娘に問いただしてみた。
母 「ねぇ、どうしてキッチンに入るのがそんなにイヤなの?お母さん、冷蔵庫からとって来てほしいモノがあるんだけど…。」
娘 「イヤ!絶対いやだ!!]
母 「どうして?いっつもそうやって、あの部屋だけはなんでなの?」
娘 「...。」
母 「お父さん、なんとか言ってよ。こんなことずっと言い続けられちゃぁ...。」
父 「どうした?ワケがあるなら言ってみなさい。お父さんが聞いてあげるから。」
しぶしぶと、娘はこんなことを語り始めた。
娘 「あの部屋にね、誰かいるの。知らないおじさんが。」
両親「知らないおじさん?」
一瞬あっけにとられ顔を観合わせた両親であったが、きっと何か怖い夢でも見て、現実と夢がごちゃ混ぜになって思い込んでるに違いない、と父は続けた。
父 「どこにいるの?そのおじさん。どんなひと?」
娘 「部屋の奥の、冷蔵庫のすみにうずくまってるの。顔伏せて。痩せてて、青白くって、嫌なおじさん...」
両親 「...。」
そこで両親はある策を講じた。
父 「じゃぁ、いいかい。お父さんが、そのおじさんをおっぱらってやるから。すぐにいなくなるよ。」
娘 「でも...絶対いかないよ、あのおじさん...。」
父 「おとうさんがね、この金属バットで追い払うから。」
娘 「...ムリだよぉ...。」
両親は、おびえる娘を連れて、奥のキッチンへと進んだ。
キッチンの手前で、娘は立ちすくみ、母の手をにぎりしめたまま離そうとしない。
キッチンを覗くことすら嫌がる娘を、両親は強引に引っ張りこんだ。
父 「さてと。どこにいるって?そのおじさん。」
娘 「冷蔵庫のすみ…。うずくまってるの。いるでしょ?顔伏せてるひと。」
父 「んん...このへんかなぁ?」
と父は、半分冗談まじりに、見えもしない『おじさん』に向かって、金属バットを2~3度振り下ろした。
まるで、そこに『おじさん』でもいて、殴りかかるかのように...。
父 「えいえい。あっちへ行け!どうだまいったか、あっちへ行っちゃえ!」
そして父は、娘にキッチンへ入るよう、うながした。
父「ほら、いっちゃったよ、おじさん。もういないだろ?だからキッチンに入ってきなさい。」
そして、娘さんは恐る恐る、キッチンのなかを覗きこんだ。
次の瞬間、娘が叫んだ。
「お父さん、おじさんまだ冷蔵庫のすみっこで、座ったままこっちに顔上げて、ニヤニヤ笑ってるよ!!」
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