私は、大阪難波のとあるビルで働いていました。
3年ほど前のある日、まだ私がそこに勤めていた時のことです。
深夜まで続いた売り場の模様替え作業がようやく終わり、地下のトイレに行くと、手洗い場のところに女の人がいました。
女の人は見たことのない制服で、深夜なので不審に思いましたが、私と同じように深夜残業なのだろうと考えることにしました。
その人は気分が悪そうにうつむきかがんでいたので、「どうかなさいましたか?」と声をかけると、「痛い・・・痛い・・・」と言っています。
とりあえず、事務所まで案内しようと「それは大変ですね。事務所の方でおやすみになっては。お連れします。」と声をかけ、手を差し出しました。
女の人は顔をうつむけたまま手を握ってきました。
「っ!」
女の人の手は驚くほど冷たかったのです。
その瞬間私はその女の人がこの世のものではないと感じました。
咄嗟に私は手を離しました。
女の人はうつむけていた顔をこちらに向けました。
見てはいけないと思いながらも私の目は言うことを聞いてくれませんでした。
その女性の顔は真っ青で生気が全く感じられませんでした。
女性は立ち上がり、「助けて・・・助けて・・・・」と私に迫ってきました。
私は声にならない悲鳴を上げていたと思います。
後ずさりしながら何とかトイレから出ようと思いました。
よく見ると女性は、胸の辺りを押さえています。
「助けて・・・」
ともう一度その女性は言うと、すぅっと私の前から姿を消しました。
私は動揺しながらも事務所に駆け込みました。
事務所の先輩に一部始終を話すと、先輩は、落ち着いた口調で、「あなたも見たんやね。よく出るんよ。あれはね・・・」と話し始めました。
実は20年ほど前にそのトイレで、洋品店に勤めている女性が17歳の少女に刺殺される事件があったそうです(相当有名な事件らしいです)。
この世に未練を残したまま亡くなった彼女は、今頃、またトイレに現れ苦しんでいるのかもしれません。
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