小中学校の卒業文集にさえ「心に残る思い出、何もなし」と書いた私。
人並みの生活を送ることさえ出来ず、夢と希望は常に打ち砕かれ、ただ目の前の出来事を受け入れることに専念した。
世の中に失望していたわけでもなく、すべてに無気力だったわけでもなかったが、気がつけば、ひどく冷めた少女時代を送っていた。
そんな私にも、ひとつだけ楽しかった思い出がある。
もう断片的にしか思い出せないけど・・・
ものごころついたころから、父はすでにいなかった。
4歳くらいのある夏の日、家の前で遊んでいた私の前に父が現れた。
大喜びで家の中に飛び込んで、夕食のカレーを作っていた母に向かって叫んだ。
「おとうさんが帰ってきたよーーー!!」
部屋の中でいっぱい遊んでもらった。
足で身体を宙に持ち上げてもらったり、「たかいたかい」をしてもらったりした。
ずっと笑ってたせいでヨダレが父の顔に垂れた。
それを見てみんな大笑いした。私も大笑いした。
家族6人でカレーを食べた。母以外のみんな笑ってた。
嬉しくて楽しくて幸せ一杯だったあの日。
無邪気だったあの頃。何故か胸が痛くなる。
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