確か高校生くらいの頃だったと思うけど。
中間だか期末試験だかが間近で、俺は夕食中にも教科書を広げていたさ。
んで、母親に「もう、こんな時にまで勉強してないで。そんなにそれって難しいの?」って聞かれて、昔から解らないことは何でも親に聞いて育った俺だったから、立場が逆転したのを感じてちょっと頭に乗って、「うん、難しいよ。まあ、母さんみたいな短大卒には絶対解らないね」とか言ってしまったんだよ。
泣かれた、無茶苦茶泣かれた。
と言っても別に悔しいから泣いたって訳じゃなくて。
母親が俺の父親と結婚するとき、母方の祖父母が父方の祖父母に挨拶にいったんだけど、その時母親の父が中卒だったってことで、当時ブルジョアだった父方の祖父母に酷く馬鹿にされたんだそうだ。
母親はそれがたまらなく悔しくて、すごく悲しかったらしい。
で、俺までそんな偏見を持ってしまったのかって泣いてしまったんだと。
その話を聞いて、俺はもう自分がたまらなく情けなくなった。
「ごめんなさい、ごめんなさい」ってもう何度も何度も謝って、その日は夕食後もしばらくベッドにうずくまって後悔しまくってた。
それまでは、俺の幼馴染の優等生の母親が数学の教師で羨ましいと思っていたんだけど、その日以来俺は母さんが母さんで良かったなあって思っている。
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