台所で炊事をしながら母さんが言ったよ。
「おとうさんの病気はね、告知をするとかしないとかそういう類のモノなの」
現実感がまったくなくて、親父がいなくなるというコトがとても信じられなかった。
下着だけで家の中を歩き回る親父の姿とか、風呂の中から「タオル!」と母親を呼ぶこととか、なんかホントーにどうでもいいことばっかり思い出してさ。
そんとき、親父が元気になったら一緒に飲もうと思ったな。
幸い病気は最悪の状態じゃなくて、胃の3/4を切除にとどまった。
しばらくたって、家族で親父行きつけの寿司屋で誕生日を祝ったよ。
「酒はいつもなにを飲むんだ?」って聞かれたから、「だいたい日本酒だね、いちばん好きかな」っていいながら一緒に飲んでやったらなんかすげー朗らかに笑うのよ。
もうニッコニコ。
なんだ!こんなに嬉しいものなのか!?と真剣に思ったね。
ホントは日本酒、あんまし好きじゃないんだけど、親父くらいにおいしそうに飲めるようになりたいな。
たとえ血のつながらない親子でも、なんかぜんぜんいいや。
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